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このままだと無理にでも練習に行かれると思った頭は、咄嗟に体を動かしていた。私の右手は凛の腕を掴んでいた。
「駄目だよ。今日は練習行かせないから」
「何でテメェに決められねぇといけねえんだよ。どけ」
「オーバーワークすぎだよ最近。倒れるの2回目だよ。体に限界がきてる。時々は休まないと駄目だってば」
「あんなぬりぃ練習がオーバーワークなわけねえだろ。笑わせんな」
「おばさんとおじさんがどれだけ心配してると思ってるの?周りに心配かけて倒れてるんじゃ駄目だよ」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃうっせえ!!勝手に理解者ズラすんな!!!ちょろちょろつきまといやがってウゼぇんだよ!!!」
……分かってる。分かってるよ。
これは八つ当たり。自分でも扱いきれない苛立ちや憎しみをどうすればいいのか分からなくて私に当たってる。それだけ。
でも、少しでも。
本当にそう思われているのかもしれないと思ってしまったら。
だってこんな幼馴染、ウザいに決まってる。倒れて気付いたら部屋で寝てて、ただの幼馴染が部屋にいるとか。しかもサッカーの練習を止められるとか。幼馴染のくせに何様だよって話じゃん。うるさいって思うに決まってる。現に私がしてきたことは、つきまとってるって思われてもおかしくない。
っあ、駄目だ。一回ダメージ受けたら駄目だ。
駄目だと気付いた途端、頬が生温かった。八つ当たりされてるだけだと自分に言い聞かせても、受けたダメージは頭で考えるより大きかったらしい。
生温かいものが何なのか気付いてしまい、凛から顔を背ける。止まれと何度願っても何度それを手や腕で拭っても一向に止まる気配がない。
……って、こんなことでメンタルやられてる場合じゃない。こんなことしてる場合じゃない。凛を止めないと。練習に行かせたら駄目だ。そのために私はここにいるのに。振り返って、凛を止める。ただそれだけ。
「……り、…ん…っ」
『練習行っちゃ駄目』『体調管理はしっかりしてよ』
そう言いたいのに、かろうじて出せたのはたったの2文字。『凛』と。聞くに耐えない掠れ声に、ただの八つ当たりにどれだけショックを受けているのだと情けなくなる。
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みじゅまる。(プロフ) - こんにちは。とても素敵な作品やと思いました、自分、あまり日本語得意ではございませんが仲良くしてくださると嬉しゅうございますわ。これからもよう頑張ってくださいませ。ボードに話しかけるのは駄目でしょうかいな?。仲良くしたいです。 (6月28日 19時) (レス) id: 2b8d2ab93c (このIDを非表示/違反報告)
朔藍(プロフ) - ハロネコさん» いつもありがと (2023年2月27日 18時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
ハロネコ(プロフ) - すき (2023年2月27日 17時) (レス) @page13 id: 6af24d38bc (このIDを非表示/違反報告)
朔藍(プロフ) - 乱中 久さん» 千切くんの方もこっちも読んでくださってるのですか…!!!2作とも読んでくださりコメントもくださり本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2023年2月11日 22時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
乱中 久(プロフ) - コメント遅くなりましたが、こちらの作品の更新もありがとうございます!朔藍さんの書く軽妙なやりとりがとても好きです。これからも更新見守らせていただきます。 (2023年2月11日 20時) (レス) id: e6695fc53b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔藍 | 作成日時:2023年2月2日 21時