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「クッソ反吐が出るぜ。
もう二度と俺を理由にサッカーなんかすんじゃねぇよ。
だいたい、お前にお前にとって俺は特別かもしんねぇが
俺にとっちゃお前はもう ただの目障りで面倒臭い弟だ」
そう告げる冴くんの背中が やけに小さく見えたのも、苦しそうに見えたのも、私の気のせいだろうか。
「たまたま俺の弟に生まれただけで勘違いすんな。
サッカーのできないお前に
価値なんかねぇんだよ_______……
消えろ 凛。俺の人生にもう お前はいらない」
その場に突っ立っていることしか出来ない私の横を通り過ぎて行く冴くん。
何故冴くんが空港から一直線に私のところに来て、その後に凛のところに来たのか、理解した気がした。
中学の校門の前で柄にもなく冴くんが言い淀み迷う素振りを見せたのも。
さっきは帰れと言ったのに、確実に私がここにいることに気が付いたのに、何も言わないのが何よりの証拠だ。
なんだ。
今、私がすべきことは。
「………り、ん」
「…………」
「……ね、凛。ウインドブレーカー着ようよ。雪、本格的に降ってきたよ」
「…A……さ、っき…兄ちゃん、が……」
「…うん」
「消えろ…、って……いらない…って………」
「……そっか」
しゃがみ込む凛に合わせてしゃがみ込んで部活用カバンの中からウインドブレーカーを取り出して凛にかける。私のだから凛にとってはだいぶ小さいけど。そこは我慢してね。
「…な、んで…………」
「…………」
私の口から、言っていいことじゃない。
冴くんの想いは、私が言ったら駄目だ。
「……なあ…っ、……A………」
「……………、っ!?」
「なんか…言えよ…っ」
突然体に回った力強い腕。強制的に凛の腕の中に閉じ込められ、ぎゅうっと痛いくらいに抱き締められる。
初めに感じたのは戸惑いだった。凛に抱き締められることなんて何年もなかったから。
けれどそんな戸惑いは凛の体が微かに震えていることに気づくと消えていた。咄嗟に離れようとしていたのをやめ、逆に凛の背中へ腕を回す。大丈夫だよ。大丈夫だってば凛。私、ここにいるよ。そんなに力強くしなくてもどこにも行ったりしないから。大丈夫だよ。
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みじゅまる。(プロフ) - こんにちは。とても素敵な作品やと思いました、自分、あまり日本語得意ではございませんが仲良くしてくださると嬉しゅうございますわ。これからもよう頑張ってくださいませ。ボードに話しかけるのは駄目でしょうかいな?。仲良くしたいです。 (6月28日 19時) (レス) id: 2b8d2ab93c (このIDを非表示/違反報告)
朔藍(プロフ) - ハロネコさん» いつもありがと (2023年2月27日 18時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
ハロネコ(プロフ) - すき (2023年2月27日 17時) (レス) @page13 id: 6af24d38bc (このIDを非表示/違反報告)
朔藍(プロフ) - 乱中 久さん» 千切くんの方もこっちも読んでくださってるのですか…!!!2作とも読んでくださりコメントもくださり本当にありがとうございます!これからもよろしくお願いします! (2023年2月11日 22時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
乱中 久(プロフ) - コメント遅くなりましたが、こちらの作品の更新もありがとうございます!朔藍さんの書く軽妙なやりとりがとても好きです。これからも更新見守らせていただきます。 (2023年2月11日 20時) (レス) id: e6695fc53b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朔藍 | 作成日時:2023年2月2日 21時