35 ページ36
(勇次郎side)
結局あの後も練習にはならなくていつもより早い時間に事務所から帰ることになった。
早いと言っても、今は21時。
「……あーー…なにやってるんだろ」
……仕事なのに
やっと掴めてきた夢なのに
髪に片手を突っ込みぐしゃっと崩す。
「……ただいま」
いつもなら『おかえりー』と返ってくる声が返ってこない。
リビングに行ってみると机に突っ伏して眠っている彼女の姿があった。
課題をしようとして寝落ちしたのかローテーブルには数学の課題が広がっている。
…そういえば、数学苦手って言ってたっけ
キッチンの方を見ると案の定というか、夕飯を食べた形跡は無かった。
帰りが22時とか遅ければ23時になるのに彼女は嫌な顔1つせず当たり前のことのようにいつも待っていてくれる。
夕飯のときに話す何気ないことで僕がどれだけ日々の疲れを消せていることか。
部屋の中はいい匂いがするからおそらく夕飯を作り終わってから寝落ちしたのだろう。
ソファーに置かれている畳まれたブランケットを取り、彼女にかける。
……何故か
身体が、勝手に動いた。
彼女の背後に回り、起こさないように気をつけながら目の前にある華奢な肩に自分の頭を乗せる。
身長差があるから少し前のめりな感じになるけれど力を抜くとちょうどいい位置にある彼女の肩。
慣れている落ち着く彼女の匂いが、ふわりと香ってくる。
その香りと、感じる彼女の暖かさに何故か目の奥がツンとしてくる。
少しだけ、彼女の肩に目頭を押し付ける力を強める。
……ねぇ、A
僕、どうすればいいのかな
どうするのが正解なのかな
光一郎の舞台は観に行くべき、なんだよね、きっと
もう自分の中で区切りがついて新たな目標が見つかっていたって、光一郎が演じている姿を真正面から受け止められるだろうか。
でも、もし行かなかったら今以上に仕事や練習に集中できなくなってしまうのは、目に見えている。
私情を仕事に持ち込むわけにも、影響させるわけにもいかない。
そう思うと、僕が選べる選択肢は1つだけのように思えた。
222人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朔藍(プロフ) - ハリネコ@サブさん» ハリネコさん!!お久しぶりです!!連載中に頂いたコメントでもすっっっっっごく励まして頂きました本当に感謝感謝すぎる泣泣最高の読者様に読んで頂けて好きになって頂けてこれほど作者冥利に尽きるものはないです泣泣ありがとうございます大号泣 (9月13日 18時) (レス) id: 2d55a4ee9e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ@サブ - 藍朔さん‼お久し振りです。サブから失礼してますハリネコです!久々に読みたくなっちゃって来ちゃいました笑もう五週目とかほんとにこの作品好きすぎてやばーいいい笑何回読んでも最高です! (9月13日 15時) (レス) @page5 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
あーー(プロフ) - 相川あゆさん» ありがとうございます!今更で返信遅くてすみません…続きも読んでくださると嬉しいです!これからもお願いします! (2021年12月31日 16時) (レス) id: 7586c4e066 (このIDを非表示/違反報告)
相川あゆ - 推します (2021年10月22日 7時) (レス) id: 1dc4ab95d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朔藍 | 作成日時:2021年10月21日 21時