突然出会った王子様 7 【染谷勇次郎】

249 ページ10

(勇次郎side)







「ただいまー」







いつもより少し遅い時間、癖になっている言葉が口から出たけれど返事が返ってこない。



彼女の靴は玄関にあるし、リビングに電気が付いているから確実に彼女はいるはず。





寝落ちしてるのかな





いつも通りリビングに向かえば案の定、ローテーブルに突っ伏して寝ている彼女の姿があった。





今日はバイトの日だし、疲れてるのかな





そう思いながらなんとなく彼女の方へ向かう。



同じようにローテーブルに組んだ手を置き、顔を横に向けている彼女をまじまじと見てしまう。





寝てるときしか出来ないな、これ



起きてるときにやったら僕の心臓が保たない



ていうかさー、なんで寝顔までこんなに可愛いの？





スマホを取り出し、音を出さないカメラアプリで寝顔を撮る。





……これ、変態っぽくない？



こんなことしてたら、僕ヤバいやつ？



いや、でも音無しカメラアプリってこういうときのためにあるようなもんでしょ



Aに言ったら即消そうとしてくるだろうから秘密だな





ヤバいやつかもと自覚しつつ永久保存版だなと思っているあたり、僕はどうしようもないやつらしい。



これ以上このままだと何をしでかすか分からないぞと、ほんの少しだけある脳の冷静な部分が語りかけてくる。



その通りだなと思い、夕飯の準備たまには僕がしようかなと無理矢理考えを別の方向に向け、立ち上がる。







「……え…？」







立ち上がれば見えたのは、彼女の腕の下に広げられているノート。





〔____好きすぎ____〕





ノートの端の部分が腕に隠れておらず、ほんの少しだけ見えた、見慣れた彼女の字。





好きすぎ…？





ドクン、心臓が強く音を立てる。



覗きは良くないと分かりつつ、そのノートに手が伸びてしまう。



少しだけ、ずらしてみれば





〔____かっこよすぎたーー____〕





……A、好きな人いるの…？





　

250→←248

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す