突然出会った王子様 7 【染谷勇次郎】

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(R.Mside)





……んだよ、それ



内田の何もかも知ってるみたいな、その口調、なんだよ





『気付いてた？体育祭で内田が体調悪かったこと』



『ま、脱水症状で今にも倒れそうな内田を走らせて借り物競争に参加させた時点で気付いてませんって言ってるようなものだよね』





あのときの内田は、確かに俺に笑顔を向けていた。



俺に何も悟らせなかった。





『借り物競争の後、倒れて救護テント行きだったんだよ、内田』



『これからは内田に負担かけさせないようにして』





わざと俺がイラつくような口調で言う染谷。



イラついて染谷の方を向けば見えた、俺ではなくどこか遠くを捉えていた憎たらしいほど整った横顔。



好きな人を思う、一人の男子の顔。





……んだよ、両思い、なのかよ





悔しかった。



約一年半に及ぶ片思いを、ポッと現れたアイドルに取られたと思ってしまった。



ライバルですらないと、同じ土俵に立ち入ってすらいないと、思わされたようだった。





……作り話、だったりしねえのか





俺を諦めさせるための作り話なのではないかと、今思い出せば聞き苦しさしかないが、疑った。





俺は全く気が付かず、染谷は気が付いたなんてこと、あってほしくなかった。



内田への思いや理解度なら、染谷より俺の方があると思っていた。





染谷がその場を去ってから速攻で柴崎に連絡をした。



染谷のことを聞ける相手が他に思い浮かばなかった。



俺が内田を好きだと知っているからか、染谷のことをペラペラ言いたくないのか、柴崎は大分渋っていたが、粘りに粘りまくれば一つだけ口を割ってくれた。





『借り物競争の後、内田は脱水症状で倒れた』





それだけではまだ納得いかず、偶々校舎内見回りをしていた白衣姿の養護教諭を捕まえ聞いてみた。





『ほんと、姫抱きで走って連れてくるなんて少女マンガみたいだったのよ。あんなに焦って、誰かを心配する染谷君、初めて見たわ』





……マジ、じゃねえか



“アイドルだから”取られたんじゃねえ



本気で内田のことを思っているやつが、本気で内田を理解して守ろう、助けようとしているから



内田のために必死になっているから





　

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