勝てない : 野村尚平 ページ2
29期夢主 × 野村
野村 side.
偶に夜中に唐突に目が覚めて、生きたくない。芸人という職業に向いてない、辞めたい と ネガティブな思考になって涙が止まらなくなる。
日々の疲れか、それとも何かこれから悪い事があるのだろうか。よくあるこの現象を俺は病み期と呼んでいる。病み期は心に何かが足りない気がする。ぽっかり穴が空いたようなその心。
まだ分からない。考えても仕方ない。
”今日は今日でお疲れ様。こんな日に泣いてる俺も悪い。死にたいなんて明白。”
今日もツイート。病み期のツイートはファンからの反応が多い。やめてくれ。また泣いてしまうから。
そんな時、ひとつの通知。相互フォロワーしか通知が来ない設定なのでコケコッコーの事だろうかとアプリを開くと俺の大好きな1人の先輩だった。
” のむちゃん、病んでるんやったら相談してって言うやたろ ”
こんな時まで。 やめてください。涙はさらに増す。
もう歳だろうか、死んだ方がマシなのではないかと考えても考えても渋滞する思考。ぼやりとあの先輩の顔、声が浮かぶ。
こんな自分に苛ついてまた煙草に火をつける。
「のむちゃん ？」
玄関から声がした。誰やと思い玄関の方を見てみると、ぼんやりとした頭に浮かんだ 大好きなあの先輩やった。
『...Aさん。』
「チャイム何回も押したやん。聞こえへんかったん？あ、壊れてた？壊れてたんやったらごめん押しすぎたかも。」
一気に一人で喋って一人で解決する。そんないつものAさんの光景を見ただけでも安心した。
「ともかく、病み期なんやったら相談して言うたやろ？またそんなツイするんやったら一緒に居った方がマシやで。」
歳が2個上なだけなのに、大人な言葉を言った後頭を撫でてくるなんて仕草ができる彼女はとても素敵だ。
『すんません 。 忘れてました。』
「...のむちゃん泣いた？」
また痛い所を突かれてしまった。このまま嘘をつくのもどうかと思い正直に話す事にした。
『劇場でもスベって人間関係も上手くいかない俺って他に何が出来るんやろかって考えて気づいたら泣いてただけです。 心配ありがとうございます。』
定型文の様に俺は言う。
「のむちゃんは何でも出来るやん。器用やし、脚本も凄い。」
一気に褒めてくれる彼女には定型文ではどうしても勝てない。
「一緒に今日は飲もう。」
『...。酒飲んで心中しましょう。』
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作者名：RhCl3 | 作成日時：2021年9月1日 20時
