猫が三十八匹。 ページ40
sha｢ただいまー｣
おかえり。
夜遅くなって、ようやくシャオロンが帰ってきた。
俺が彼のもとに近寄れば、彼は俺をひょいっと抱き上げ、
嬉しそうに俺を撫でる。
今は片手で持ち上げられてるけど、
二時間前くらいまでは、シャオロンと同じくらいの大きさだったんだよ。
なんてことはもちろん言えないけど。
シャオロンが持っていたバックを放り投げ、
俺をそっと床に下ろすと、
バイト先でもらったのか、それともどこかで買ってきたのか、
弁当をガサガサと取り出した。
……………彼とは、もうすぐお別れだ。
家族になろうと言ってくれた彼とは。
何ヵ月も一緒にいて、命を救ってくれた彼とは。
クロに言われたのは、
この国から小国を飛び越えて近くにある、世界的にも有名な大国、
Ａ国に向かうことだった。
なんでも、Ａ国は誰彼構わず、15歳以上であれば、軍学校で受け入れをしているそうだ。
その理由は、どうやらクロも知らないらしく、まだ分からない。
Ａ国の国土はそこまで広くはない。
この国より少し広いくらいだろう。
それでも、世界に名を轟かせているのは、
軍隊が異常なほどの強さを誇るからだと言っていた。
それも……理由は分からない。
sha｢……シロ？ご飯食べないん？具合悪いんか？｣
ふいにシャオロンから声をかけられる、慌ててシャオロンの方を向けば、
床の上の皿に置かれていた俺のご飯。
心配そうな顔をして、俺のほうを見ていた。
ごめんね、そう言うわけじゃないんだよ。
謝罪の気持ちを込めて、彼の手に額を擦り付け、大丈夫だと返事をした。
俺がようやくご飯に手をつければ、
まだ心配だと言うように俺を見ながら、
シャオロンも止めていた手を動かし始めた。
優しいね。温かいね。
……発つのは、早い方がいいな。
数ヵ月でこんなにほだされて、
離れがたくなっているのだから、
あっという間に時が過ぎて、
もっと離れたくなくなる前に。
『にゃ、う。』
シャオロンとは、お別れしよう。
sha｢ん？どしたん？｣
何でもないよ。
女々しくて、強くなれない自分に嫌気がさしてるだけ。
なんて、言えたら良かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海翔(プロフ) - コメントありがとうございます!!!本気で自己満でしかないものにそう言ってもらえるととっても嬉しいです!!(*´∀`) (2020年11月13日 18時) (
レス) id: 5f7ebbff92 (このIDを非表示/違反報告)
ユンソク(仮)(プロフ) - なんて言うんだろう、簡単にまとめると好き。 (2020年11月12日 0時) (レス) id: cdb5775375 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海翔 | 作成日時：2020年10月4日 10時
