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ほんの冗談のつもりだった。
私が喫煙者だと知った時の第一声が「体に悪いで。」だった宮が、まさかこんな言葉に乗るとは思っていなかったから。
「そんなに知りたいなら吸ってみれば?」
フッと鼻を鳴らして宮の顔の前で煙草を振る。
その間も絶えず先端からは毒々しい煙が排出されていた。
「わかった。」
「え。」
全く予想していなかった展開に反応速度が数秒遅れる。
気付いたら右手で持っていた煙草は既に宮の手の内で。焦って取り返そうとするけれど、私よりも2回りほど身長が高い宮が目一杯上に伸ばした手には当然届く筈も無い。
そして煙草は、彼の薄い唇に触れる。
「ちょ、ちょっと...」
焦った。流石にないとは思うけれどこれで宮が煙草にはまったりしたら...
けれどその心配が取り越し苦労だったことに直ぐ気付く。
煙草を咥えてから宮の顔は段々険しいものに変わっていった。
「まっっず。」
ほっと肩をなでおろし、宮の手から素早く煙草を取り返す。そして間髪入れずにベランダの柵に置いてあった灰皿に擦り付けた。
「そりゃそうでしょーが。」
灰皿を持って部屋の中に戻ろうとした。
その時、不意に引かれた左腕。気の抜けていた体がそのまま宮の方に倒れ込む。
乱暴に頬を掴まれ息がかかりそうなぐらいに顔と顔の距離を詰められた。左右に小刻みに揺れる宮の両眼。
そして、噛み付くようなキス。じっくりと。互いの二酸化炭素を体に取り入れるように。
ゆっくりと離された唇がどこか名残惜しくて。
「突然なんやねん、お強請りも出来んのか。」
自分が取り乱してるのがわかった。
標準語に直したはずなのに、関西弁がすんなり出てくる。
「俺、Aさんと一緒に死にたいねん。」
「...は?」
「Aさんと同じ時間を生きて、同じ日に死にたい。」
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