彼氏.旦那が…【実|況|者】

名月【ky】 ページ32

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『今日は中秋の名月ですよ、キヨさん。』




「なにそれ？」








やけに月が明るく感じた今日。



Aが言うには、

中秋の名月というやつの日らしい。






あんまりしらねぇけど。






『北海道は空気が澄んでるから
綺麗に見える、気がする。』



学生の俺たちはまだ
東京なんかに行ったことがほとんど無い。






なのに、北海道は月が綺麗に見えるとか
知ったような口を叩く彼女。





「都会に行ってねぇくせに。」




『まぁ、確かに。』




少し笑いながら俺に同意するAは
いつもより愛らしく見える。






『なぁ、A？』


「んー？」



『月が綺麗ですね。』



そうふと思ったことを口に出した。



Aはなぜか唖然としている。






『…俺なんか変なこと言ったか？』



みるみるうちに顔が赤くなっていく。



どうしたというのだ。




『…キヨ…』


そう呼ばれて隣を見れば、






月が綺麗ですね 夏目漱石って
家に帰ってからケータイで調べて。







そう一言言い残し、
俺の先を歩いて行ってしまった。









小説家・夏目漱石が英語教師をしていたとき、
生徒が " I love you " の一文を
「我君を愛す」と訳したのを聞き、
「日本人はそんなことを言わない。
月が綺麗ですね、とでもしておきなさい」と言った









その文字を見たときに、不意に
Aに伝えたくなった。







(なぁA調べたよ。)
(…うん。)
(やっぱり今日は月が綺麗ですね。)
(？！)


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季節もの新鮮…(^O^)

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