彼女には１つの秘密がありました。【ky】

秘密37 ページ39

7時



定時に聞こえる高い着信音。


この人だけ、
この人だけのために着信音を変えた。

「ごめ、ん、」

何してたの？そんな少し笑った声。
この声が好きで、嫌い。


「明日の準備。」

公式放送出るんだってね、
そう返ってきた私の言葉への返事は、
ドスの効いた声に変わったような気がした。


「…次は、ヘマせんから。」

決まってんでしょ、
次ヘマこいたらどうなると思ってんの。

その言葉にごめん、
そう返すしか無くなる私の口。

いつもはこんなんやない。
こんな弱気になるタイプやないねんけど、
この人だけには、口答えができない。


『…本当に好きになったとは言わせないよ？』


「…そんな、わけ、」


『刻の言葉は信じられないからなぁ。』


今も、これからも、そう言った彼は、
私の言動全ての主導権を握る。

この人には従うしかないのだ。


『明日することはわかってる？』

「…何としてでも勝ち、ます。」

そう、勝たなければならない。

勝たなければ、私の今後の予定が全て変わり、
全て崩れる。

『そう。それで？』

「連絡先を聞く。」

『で？』

「…決めてない。」

『何それ、そんなにアホだったっけ？』


ケラケラと笑った彼は、
そんな笑い声とは裏腹に、毒を吐く。


『ご飯に誘って、Aちゃんと
彼を引き剥がす、ね？』

「そんなん、私、」


出来る気がしない、そう続けようとした。


『じゃ、俺との関係も終わりか。』


「それは、」


『…やめる？』



私は手のひらで踊らされている。




「…やるよ、やる。」



選択肢は１つしか用意されていないようだ。

秘密38→←秘密36

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す