winter130 幸せの形 ページ33
☆Aside
『私…』
唇を噛み締めて
『“長く生きること”だけが、“幸せ”じゃないと思うの』
精一杯の言葉を贈った。
『私の人生は短かったけど、この世の誰よりも幸せな時間を過ごしたって、胸を張って言えるわ』
何歳まで生きたのかではなく、どう生きたのか。
どんな人と出会って、どんな経験をして、何を感じて何を成したか。
それに気づくことができれば、人生はきっと鮮やかに色づく。
『この２０年、本当に幸せだった』
隣にいる家族に目を移す。
父上と兄上は泣き崩れ、母上も珍しく涙を流している。
そして自分自身も涙を流しながら、声を震わせる。
『私を…愛してくれてありがとう……っ…』
大切な人たち……
オビ、ゼン、白雪、ミツヒデ、木々、イザナの顔を思い出す。
『皆との出会いは…私の宝物………
来世で必ずまた出会えるって、信じてるから…』
『だから、ありがとう…私は……！
この国と、この国の民を……愛しています…っ！』
はっきりと、心の奥底から絞り出すように告げた。
この世界に、生まれてきてよかった。
２０年しか生きることが許されていないのだとしても、愛する人たちと別れなければならないとしても、私はA・イルメリアとして生まれてよかった。
「「「「ﾜｧｧｱｱｧｧｱｱｱｱｱｱ」」」
「A王女！！！！」
「Aさま！今まで…ありがとう…っ」
「…いかないでくれ！」
「……っ…う」
湧き上がる大歓声と、泣き声と、感情の乗った言葉。それらすべてを噛み締めながら、深く深くその場で頭を下げた。
そして顔をゆっくりと上げ
『ありがとう』
と小さく呟いて、愛しい人たちに背を向けた。
感情が爆発しそうになるのをどうにか抑えながら、城の中へと歩き出す。
ギル「A……」
城内の廊下を歩いていると、後ろから足音が聞こえた。
振り返った途端、強く抱きしめられる。
『お兄…ちゃ…』
ギル「………」
兄上は何も言わなかった。
何も言わずにその温かさで私を包み込んだ。
『……っ…う…あ……あぁああ〜〜〜…あぁあ〜〜…っ！！！』
赤ん坊のように泣きじゃくった。
大声をあげて、雨のように涙を流した。
悲しかった、悲しかった悲しかった。
もうこんな風に誰かに抱きしめてもらえなくなることも、怖かった。
『死にたくない』
脳裏によぎった言葉を、そっと隠した。
winter131 痛みすら愛おしい→←winter129 痛いくらいの優しさに
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ルルコ - 大・号・泣！！ ほんとにタイトル通り涙の雨です！それも大雨！最後の宝探し(手紙とお花)なんて神ですね！別の意味でさらに感動しました (2021年12月15日 1時) (
レス) @page50 id: 71a021f1b6 (このIDを非表示/違反報告)
purupru(プロフ) - はまってしまい、一気に読みました。涙雨3に入ってからは涙がでて止まりませんでした。更新再開を楽しみにしてます^ ^ (2018年11月6日 20時) (レス) id: bc972e56cf (このIDを非表示/違反報告)
れ - 一気に読んでしまいました。涙がとまりません。また、物語がスタートするの待ってます。 (2018年10月13日 17時) (レス) id: 3522cc0a39 (このIDを非表示/違反報告)
かりそめの蘇生(プロフ) - 更新再開してくれて嬉しいです！完結まで楽しみにしてます！ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 4709ebaabe (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - クラリネスで涙花病の薬つくってほしい (2018年5月15日 14時) (レス) id: 1e69e1c4b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミネコ | 作成日時：2016年12月9日 20時
