autumn120 残された時間 ページ23
☆Aside
タンバルン城に到着してから食事をとった後、大きな広間に集まった。
オビとミツヒデは壁に背を預け、その他の全員はソファに腰掛けている。
皆疲れているはずなのに、誰一人として個室へは行かなかった。
ゼン「なあ、ひとつ……いいか？」
唐突なゼンの問いに、ゆっくりと頷いた。
ゼン「なんで…もっと早くに言ってくれなかったんだ？」
『！』
ゼン「お前が20歳で……いなくなるって知ってたら、
もっと…お前との時間を、大切にできたのに……
執務なんか投げ出して、お前と一緒にいたのに…」
ゼンはきっと、自分を責めている。
幼いころからずっと一緒にいたのに、私の病気に気が付かなかったから。
私が言わなかっただけなのに…
ゼン「お前が突然姿を消したのも、その病気のせいなんだろう？」
そう。
１０歳になったあの日から、体に異変が起き始めた。
涙が雫ではなく、花びらになった。
パニックに陥る私を必死になだめながら、
父上と母上は、泣きながら私に真実を伝えた。
お前はあと１０年しか生きられない、涙花病なのだと。
『あのね……ゼン』
こんなこと言ったら、あなたは怒ると思うけど
『私ね、姿を消したあの日から、誰にも会わず
イルメリア城でひっそりと尽き果てるつもりだったの』
『皆に、悲しい顔をしてほしくなかったから』
だけど
『だけどね』
視線を、壁へと背中を預ける、私の大好きな人へと向ける。
『オビと出会って、考えが変わったの』
『どうせあと１年しか生きられないなら、やりたいことをおもいっきりやって、
会いたい人に会って、冬になる前に姿を消そうって……』
欲が、出てしまったのだ。
幸せな思い出に包まれながら、最期を迎えたいって。
そして、予想外のことも起きた。
それは、オビに恋をしてしまったこと。
どうしようもないほど、好きになってしまったこと。
私たちは、互いを想い合ってはいけないのに。
白雪「……」
『……白雪？』
何の前触れもなく、彼女の大きな瞳から、キラキラと光る宝石が落ちてきた。
白雪「…ごめん。
Aに会えなくなるんだと思ったら…急に……」
『白雪……』
気を抜くと、私も泣いてしまいそうだった。
だから、唇を噛み締めて、明るい声でこう言った。
『まだ時間はあるよ。だから、思い出をたくさん作ろう』
幸せな思い出に包まれながら逝きたい。
これが、私の最後の願いだ。
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- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
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ルルコ - 大・号・泣！！ ほんとにタイトル通り涙の雨です！それも大雨！最後の宝探し(手紙とお花)なんて神ですね！別の意味でさらに感動しました (2021年12月15日 1時) (
レス) @page50 id: 71a021f1b6 (このIDを非表示/違反報告)
purupru(プロフ) - はまってしまい、一気に読みました。涙雨3に入ってからは涙がでて止まりませんでした。更新再開を楽しみにしてます^ ^ (2018年11月6日 20時) (レス) id: bc972e56cf (このIDを非表示/違反報告)
れ - 一気に読んでしまいました。涙がとまりません。また、物語がスタートするの待ってます。 (2018年10月13日 17時) (レス) id: 3522cc0a39 (このIDを非表示/違反報告)
かりそめの蘇生(プロフ) - 更新再開してくれて嬉しいです！完結まで楽しみにしてます！ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 4709ebaabe (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - クラリネスで涙花病の薬つくってほしい (2018年5月15日 14時) (レス) id: 1e69e1c4b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミネコ | 作成日時：2016年12月9日 20時
