spring7 生命が消える瞬間 ページ8
★オビside
オビ「うまい…
お嬢さんはどこでお菓子づくりを習ったんだい？」
『おばあ様に、子供の頃教えてもらったの』
“おばあ様”…ね。
お嬢さんは随分と育ちがいいんだろう。
身内を様付けするなんてビックリだ。
オビ「へぇ…」
『この家も、元はおばあ様の物なの。
今は私のだけどね』
すごく悲しげな表情を浮かべるお嬢さん。
亡くなったのか？
少し躊躇ったが、聞いてみることにした。
オビ「今、おばあさんは……」
『いなくなってしまった。
２年前くらいに……老衰でね。
その日のことはよく覚えている。
雨が、ザァザァとすごい勢いで降る日だった』
どこか遠くを見るように話すお嬢さん。
オビ「…辛かったね」
『うん。おばあ様には、よくしてもらってたからね。
…でも、もう昔のことだから』
弱弱しい笑顔を向けるお嬢さんに、なんて声をかければいいかわからなかった。
『ごめん、なんかしんみりしちゃったね。
ほら、もっと食べて。
食べ終わったら傷の手当てをするから…』
オビ「…そうだね。食べよっか」
なんとなく気まずい雰囲気が流れたが、それは一瞬だった。
『オビの瞳って猫みたいね。とっても綺麗』
そう言う彼女の瞳は、エメラルドのような緑色。
君の瞳の方がよっぽど綺麗だ、なんて歯の浮くようなセリフが頭に浮かんだが、ちょっとした冗談を言うことにした。
オビ「実は俺の父親は猫なんだよねぇ」
『じゃあオビは猫と人間のハーフなのね』
オビ「普段は人間の言葉を話してるけど、猫語も話せるんだ。
にゃーにゃーにゃにゃにゃー」
ティーカップを置いて、両手で猫のポーズをしながら鳴いてみる。
『なんて言ったの？』
オビ「“お嬢さんとお茶を飲めて嬉しい”って」
『ふふ…』
また、花が咲いた。
温かい気持ちに包まれていると、彼女は悪戯っぽく微笑んだ。
『実は私も少しだけ話せるの！
にゃーにゃーにゃにゃん』
オビ「“私も嬉しい”かな」
『惜しい。“あなたとの会話はすごく楽しい”って言ったの』
オビ「これは失礼。猫語の勉強に励むことにするよ」
『ふふっ……きっとオビのお父様も喜ぶわね』
俺の言葉で彼女が笑ってくれる瞬間が、永遠のように感じられた。心地よくて、温かくて、少し切ない。
ずっとこの時間が続けばいいのに。
叶うはずのない願いを抱いてしまうほどに愛おしい時間は、やがて夢のように儚く散った。
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朝葵(プロフ) - いちごチョコさん» わぁぁああ！(´▽｀*)そんなに楽しみにしていただけて本当に本当に嬉しいです。いちごチョコさんのおかげでやる気湧いてきました！更新頑張りやす。 (2016年8月30日 19時) (
レス) id: 14edfa9aa5 (このIDを非表示/違反報告)
いちごチョコ - すっごく面白くてお気に入りです!!次のお話が楽しみで楽しみで…なので、これからも更新頑張ってください!!
応援してます!! (2016年8月30日 19時) (携帯から) (レス) id: b2da1acbeb (このIDを非表示/違反報告)
朝葵(プロフ) - ナッチャンさん» Thank youです！！励みになります<(_ _*)>これから学校始まるんで更新速度が遅くなると思われますが、頑張りやす！ (2016年8月27日 15時) (レス) id: 14edfa9aa5 (このIDを非表示/違反報告)
ナッチャン - めっちゃ書くの上手ですね！！すごく面白かったです！！これからも頑張ってください！ (2016年8月26日 23時) (レス) id: 6790929056 (このIDを非表示/違反報告)
朝葵(プロフ) - 彩羽さん» あ、ありがとうございまぁああす！！(´ω｀*)超嬉しいです！なるべく早く更新できるように頑張りやす！！ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 14edfa9aa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朝葵 | 作成日時：2016年8月9日 18時
