winter152 生きて ページ5
★オビside
オビ「……」
いつの間にか涙は止まっていた。
心が、何か暖かなもので満たされているのを感じた。
くしゃり
宝物を胸に抱くと、ゆっくりと立ち上がって目の前の枝垂れ桜を見上げる。
＿＿＿＿＿＿＿“生きて”
オビ「…A、俺はもう大丈夫だから、
あんたも安心してよ。
心配かけてごめんね。
かっこ悪い俺は今日で終わり。
またいつものへらへらしたオビに戻るからさ…
だから……」
オビ「傍で見ていてくれ…
…強く、強く生きるから…あんたの分も…」
サアアァァア_____
途端、春風が木々を揺らして、
桜が雪のように舞い落ちる。
オビ「！！！」
桜吹雪の中、白いワンピースがふわりと揺れた。
そこには確かに、彼女がいた。
『オビ』
花のような笑顔が咲く。
俺は必死に手を伸ばす。
オビ「A…っ！！」
＿＿＿＿＿＿ザアアアァァア___
サァアアアァア＿＿＿＿＿＿＿＿
さっきのとは比にならないくらい強い風が吹き荒れ、
思わず目を瞑った。
花嵐が収まった時、
そこにはもう彼女の姿はなかった。
掌には一枚の花弁。
オビ「今のは…」
桜が見せた幻想だったのだろうか、
それとも俺の妄想か。
もうなんだってよかった。
もう一度、Aの笑顔を見ることができたのだから。
オビ「ハハッ…」
不思議と笑みがこみ上げた。
胸が、足が、驚くくらいに軽い。
オビ「ねえA、知ってた？
俺って、実はもうすでに世界で一番幸せな男なんだよ」
自分が愛した女性にこんなにも想われているのだ。
好きな人が自分を好きになってくれるってだけで奇跡なのに。
俺にはもったいないくらいの幸せだよ。
オビ「じゃあまたね、A」
枝垂れ桜を背に、一歩、また一歩と踏み出す。
もう迷いはなかった。
ミラ「もういいのか？」
花園の入り口で待っていてくれたみたいだ。
オビ「美女を待たせるなんて俺としたことが…
寒かったですよね、すみません」
ミラ「気にするな……フッ…」
彼女は俺の顔を見ると満足気に笑った。
疑問に思って見つめると、答えが返ってきた。
ミラ「いい顔だ。あいつのおかげか？」
オビ「そうですよ。彼女はこの先もずっと
俺の生きる理由で、心の支えです」
天国にいるあんたに
土産話をたくさん用意しとくよ
だから、楽しみに待っててくれ
俺のお姫さん
オビ「それじゃあ、いきますか」
fin
・
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名無し67465号(プロフ) - 号泣しました。素敵な作品をありがとうございました。何度も読み直しにきます。ありがとうございます (10月25日 2時) (
レス) @page7 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - すごく感動して、心にグッとくるお話でした。ハッピーエンドの作品だと思ってみたら、すごく悲しいエンドで衝撃的だったけど、作者さんのコメントを見てすごく納得しました。この作品を作ってくれてありがとうございます。この作品に出会えて良かったです(><) (2022年1月1日 8時) (レス) @page16 id: 740eade1e6 (このIDを非表示/違反報告)
華奈(プロフ) - 1日で全て読んでしまいました…笑 読み進めていく度に号泣してしまいました…明日は目が腫れますね笑 素敵な作品に出会えて良かったです！ありがとうございました！ (2021年12月22日 0時) (レス) @page7 id: 45dc289628 (このIDを非表示/違反報告)
イヌイット(プロフ) - 号泣しました。心に響く素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月23日 4時) (レス) @page7 id: 4f33071aee (このIDを非表示/違反報告)
菜月 - とても感動しました！心に響いて涙が溢れ出しました…、、ありがとうございました^_^これからも応援してます！ (2021年6月9日 17時) (レス) id: 6961366fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミネコ | 作成日時：2019年3月24日 1時
