winter148 深淵 ページ1
★オビside
四輪の花を手に、イルメリアへと馬を駆けた。
彼女との日々を思い出しながら。
そして何日かかけ、ようやく＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
オビ「懐かしいな…」
別れの儀式以来のイルメリア。
馬を引きながら城下を歩く。
王女が去った悲しみに打ちひしがれているかとも思ったが、
活気に溢れ、皆が笑っていた。
前に進もうと上を向いていた。
彼らを眩しく感じるのは何故だろう。
衛兵「オビ殿、よくぞ参られました。
白蓮の間でミラ王妃がお待ちです」
城に到着すると、真っ白な扉の前に案内された。
衛兵「王妃、客人をお連れしました」
入れ、という言葉を合図に扉を開く。
そこには、優雅にカップを傾ける彼女がいた。
ミラ「ああ、お前か。
予想よりずいぶん早い到着だな」
相変わらずの美貌だが、その顔は酷くやつれ、
目の下にはクマが浮かんでいた。
以前会った時とはまるで別人だ。
オビ「久方ぶりですね」
ミラ「ははっ…ひどい顔だな。
まあ、それは私もか…」
沈みゆく月のように微笑むと、
王妃はゆっくりと立ち上がった。
ミラ「…オビ」
オビ「！」
気がつけば、俺は彼女の腕の中にいた。
優しく、優しく、まるで赤ん坊をあやすように頭を撫でられる。
ラベンダーの香りが鼻をかすめた。
ひどく心地よい
人のぬくもりとはこんなにあたたかなものだっただろうか。
ミラ「…辛いな、オビ」
心に突き刺さるような悲痛な声だった。
何も、応えることはできなかった。
ただじっと、次の言葉を待った。
ミラ「なあ、ひとつ聞いてもいいか？」
何も言わず、ゆっくりと頷く。
ミラ「お前は、後悔していないか？
あいつとの出会いに、あいつを好きになったことに、今こうして苦しんでいることに」
予想外の質問だった。
俺はそっと王妃から距離を取ると、迷うことなくこう告げた。
オビ「後悔なんて、あるわけないじゃないですか。
彼女との出会いは、俺の人生最大の幸福ですよ」
この深淵のような悲しみさえ愛おしいと言えば、
あなたは笑うだろうか。
狂っている、と呆れるだろうか。
ミラ「そうか………」
王妃は、どこか安心したように微笑んだ。
この言葉が、
彼女が前に進むための糧になればいいな、と思った。
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名無し67465号(プロフ) - 号泣しました。素敵な作品をありがとうございました。何度も読み直しにきます。ありがとうございます (10月25日 2時) (
レス) @page7 id: 4d7900bf24 (このIDを非表示/違反報告)
和奏(プロフ) - すごく感動して、心にグッとくるお話でした。ハッピーエンドの作品だと思ってみたら、すごく悲しいエンドで衝撃的だったけど、作者さんのコメントを見てすごく納得しました。この作品を作ってくれてありがとうございます。この作品に出会えて良かったです(><) (2022年1月1日 8時) (レス) @page16 id: 740eade1e6 (このIDを非表示/違反報告)
華奈(プロフ) - 1日で全て読んでしまいました…笑 読み進めていく度に号泣してしまいました…明日は目が腫れますね笑 素敵な作品に出会えて良かったです！ありがとうございました！ (2021年12月22日 0時) (レス) @page7 id: 45dc289628 (このIDを非表示/違反報告)
イヌイット(プロフ) - 号泣しました。心に響く素敵な作品をありがとうございました。 (2021年9月23日 4時) (レス) @page7 id: 4f33071aee (このIDを非表示/違反報告)
菜月 - とても感動しました！心に響いて涙が溢れ出しました…、、ありがとうございました^_^これからも応援してます！ (2021年6月9日 17時) (レス) id: 6961366fb5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミネコ | 作成日時：2019年3月24日 1時
