絶望プリズン短編集 (ページ8)

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キスケ 3ー1 ページ8

「あー…やっぱカッコイイ…」

(またかよ…)

退屈そうに彼女がテレビに釘付けになっているのを見つめる。

(たまにはこっち見ろよ、ばーか。)

そう思うものの言えずにじっと見つめる。

「ねえ、キスケもカッコイイと思うでしょ？」

こちらを振り返らずにそう彼女は言った。

「別に…」

「別にって…この良さがわかんないかなぁ…？」

彼女が見ているのは恋愛ドラマ。
食い入るように見つめていて。

「はあ…やっぱこの俳優さん、マジイケメン…尊い…」

(つまんねー)

お前は俺の彼女じゃねえのかよ、俺は彼氏じゃねえのかよ。
なのに家に来てドラマって…

(ホント、ムカつく。)

内心ではいくらでも悪態はついてるものの、口には出さない。
コイツが好きな物を、邪魔したくねえし。

「はぁ…女優さんと変わりたい…」

「……」

やっぱ前言撤回。
ぐいっと引き寄せる。

「え、な、なになに！？」

「俺を見ろよ。」

「へ？」

「だから、俺だけを見ろよ。」

額をコツ…と合わせると真っ赤に染まる顔。
それに気分よくした俺はそのまま両手で頬を撫でる。

「お前は俺の彼女だろ？それとも、俺のこと嫌い？」

「…う、うん…好き…だけど…」

明らか動揺したように視線を彷徨わせる。
そんな彼女が可愛い。

「だったら………………」

「っ…う、ん……」

最後の言葉は耳元に囁いて。

(だったら、一生俺のことだけ見てろ。)
(そんなこと言われたら、ますます好きになる。)