絶望プリズン短編集 (ページ13)

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キスケ 5ー3 ページ13

「キスケ、ごめんね。また世話やかせて。」

「お前のドジは今に始まったことじゃねえだろ、気にしてねえよ。」

「いい加減キスケ離れしなきゃね。」

そう言いながら笑う。
そうだ、そろそろキスケ離れしなきゃ…きっとキスケも迷惑だ。

「……なあ、覚えてるか？」

「え？」

「ガキのころ、お前虐められててさ。ピーピー泣いてたろ？その度にこうやっておぶってやって。家に着く頃にはケロッとしてて。」

「あー…もちろん覚えてるよ。」

小さなころとは違う大きな背中に身を預けながら話す。

「…あの時の約束…は………で……か…」

「…え？」

「だから！あの時の約束は…その…今でも…有効か？って聞いたんだよ、ばーか。2回も言わせるな。」

そう言うキスケの表情は見えない。
でも耳が赤くなってるのはよく分かった。

「…約束って？」

「…っ…忘れたのかよ？」

「いや、覚えてるけど…さ…ほら、一応確認した方がいいかなって思って…」

心臓がバクバクと音を立て騒ぎ出す。

「…お前は…俺が守ってやるって…だから…その…いつか、結婚、しよ…って…あーもう！くっそ…」

ーお前は俺が守ってやるからな！ー
ーだから大きくなったらいつかケッコンしよ！ー
ーそうすればずっと一緒だから守ってやれるし！ー
ーだから俺のそば、離れんなよ！約束な！ー

「……ばーか。覚えてるよ。」

「だったら…離れる必要ねえだろ、バカ。」

「…約束破ったら許さないから。」

あの頃と同じ気持ち。
ただ違うのはあの頃より大きくなった身体。
そして、この感情に名前があるということを知ったこと。
ただ、私にはまだその言葉を言うには重くて。
言葉の代わりに首に回した腕に力を込めた……。