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カタンッ。手に持っていたおしるこが思わず手から離れてベンチに転がる。
『えっと、大丈夫、?何かあった、?』
名も知らぬ少年。先程私の不注意でつまづき階段から落ちた所を助けてくれた彼に何故か抱きしめられている私。
彼の顔はちょうど私の右肩辺りにあってどんな顔をしているかなんてわからないけれど何となくなにかに苦しんでいるような気がして大丈夫だよと伝えるように肩口にある頭をそっと撫でた。
すると驚いたようにビクっと少しだけ動いた彼は大きく息を吸うとそのまま深く息を吐いた。途端に緩くなる腰に回っていた腕。それを機にゆっくりと離れると未だに俯いている彼。
『なにか辛いことでもあった?』
「ない」
『そう、?
だったらいいけど…えっと、会ったばかりの私にこんなこと言われてもって思うだろうけど、何かあったら話だけでも聞くから遠慮なく頼ってね、いつでも力になるから。って言っても多分大したことはできないんだけどね、』
少し笑いながらギュッと握りこぶしを作っている手に少し触れると嫌がる様子もないので包み込むように握ってあげれば俯いていた顔を上げた彼。
『わあ、真っ赤なお顔。』
「はぁ?なってねーし」
『なってるよ。』
「嘘つくな。」
『嘘じゃないもん、鏡で見る?』
「いい!見せてくんなうぜえ!」
『ふふふっ、ちょっと元気になった?』
「なってねえ元からなんもねーよ!」
『えーそうなのー?それならいいけど。…あっもうこんな時間お昼休み終わっちゃう、教室戻らないと。』
あまり女の子に免疫がないのだろうか。すぐ顔を赤くさせる彼を思う存分いじり倒すとそういえば時間ギリギリだったのを思い出してスマホを取りだしてみれば案の定あと3分になっていて、私たち2年の教室は三階にあるものだから少し急がないと間に合わない。
『じゃあまた今度、会えたらいいね。あ、このおしるこいる?』
「いらねえ」
『だよねー。バイバイ。』
さあ急げ我が教室へと小走りで向かおうとすれば後ろから「おい」と聞こえた気がして少し振り返る。どうかした?と彼を見た。
「やっぱそれ貰ってやる。」
『ふふっ、何その上から目線、投げるよー』
緩く投げたそれは綺麗な放物線を描き見事彼の手の中へ。
『わーすごいナイスキャッチ。』
ぱちぱちと少し拍手をするとふんっと少し鼻を鳴らす彼。今度こそさようならと手を振り別れると私は急いで教室へと向かったのだった。
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作者名:花子 | 作成日時:2024年1月16日 17時