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凛side
ピッ
ボタンを押せば落ちてくるスポーツ飲料。
手に取って自販機の隣にあるベンチに腰掛けると大きく息を吐きごくごくと買ったばかりのそれを飲んだ。
「あ"ぁ"くそっ!!」
静まれ鎮まれ戻れ大人しくしろ俺の心臓だろ言うこと聞け!!
騒いで止まない心臓のあたりを握り潰すようにギュッと抑える。
理由はわかっている。だけど認めたくない、あの女のせいだ。あの女を間近で見た時から、頬に触れられた時から、心配するような瞳に見つめられ手に触れられた時から…
何かがおかしいと思った。最初に見た時からウザいくらい騒がしく鳴りだした心臓。これ以上おかしくなられてたまるかと伸ばされた手を払って必死にいつも通りの顔を保った。
なのに簡単には元に戻ってくれなくて今もこうして鳴り止まぬ心臓を深呼吸して必死に戻そうとしている。
ありえねえ、絶対ありえねえ。
一目惚れ?俺が?恋だ何だにうつつを抜かす暇があるならサッカーをして一刻も早く兄貴を超えてやると練習に明け暮れて過ごしていたこの俺が?
たった一目見ただけの女にここまで調子狂わせられるとかありえねえ。
Aと呼ばれていたあいつ。少し見えた苗字だけ書かれた名札にはAと書かれていて十中八九さっき教室で男二人組が話していた女だったのだろうと簡単に予想は着く。
何が天使だ女神だと思っていたが間近で見たあいつの顔は確かに綺麗な顔をしていた。見つめれば吸い込まれるかのような大きくつぶらな瞳。あんなにも綺麗で邪な感情を含んでいない目を見たのはどれくらいぶりだっただろうか。
思い出せばまた騒がしくなる鼓動に嫌気がさし胸を押えたまま項垂れる。
すると近づいてくる誰かの気配と自分にかかる黒い影。
隣の自販機に用があるのだろうと無視していれば聞こえてきた声に上を向いた。
『あ、、間違えておしるこ押しちゃった、コーンポタージュ飲みたかったのにショック、、
あれ、え?あ、さっきの助けてくれた……ってどうしたの心臓なんか押えちゃって、やっぱりさっき私のせいでなんかあった?胸の辺りに勢いよく頭もぶつけちゃったしそれのせいかな、どうしよう保健室行く?』
まさかここで、こんなところでまた再開するとは思っていなくて目の前に突然現れてまた心配をするように慌てているこいつを呆然と見つめていると「とりあえず保健室行こう」と腕を軽く掴まれる。
その腕を逆に掴んで引っ張ると体に感じる体重。
何やってんだ俺
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作者名:花子 | 作成日時:2024年1月16日 17時