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地につきそうな長い髪を上で簡単に括り付け、そして簪を指せば何時もの彼女の完成だ。
化粧をせぬのが、これまたAらしい。
耳をすませば、馬の軽やかな足音。
更に足の運びが忙しくなっていく様子を見て来たのだと悟る。
あの織田信長よりも強く、誰も敵いわしないと言われている中原中也。
いざ、その者を目の前にすると誰しも自然と体は硬くなるものだが、Aだけが
にこにこと可愛らしい笑みを浮かべ、いつもの調子である。
「A−!」
店主の声がする。
着物が崩れぬよう、ゆっくりと立ち上がった。
「ほな、行くわな」
「ええ。頑張って下さいね」
小さく腕を振ってくるナオミに、なんと彼女はかいらしい事だろうかと
小さくわっちも手を振り返した。
*
「今日はようお越しくださいました」
「彼女がAです」
深く、深く頭を下げる店主とは反対にAは小さくにこりと笑って軽く頭を下げるだけだった。
普通の者だったら、首が跳ねられるところだが、Aだからこそ許される行為である。
ほう、と息を吐いて彼女、Aを見つめる中原。
周りが美しい美しいと騒ぐだけある。まさに天女のような美貌の持ち主だな、と心底考えた。
「ほな、また後で宜しゅう願いますね」
Aはさささっと、静かに足音を立てずに下がっていった。
ふんわりと残る彼女の匂いに心をくすぐれらる。
「こちらでございます」
ついてこようとする使用人を追っ払う。
でも、と渋る此奴らに大丈夫だ、と言えば静かになりまさに鶴のひとこえ。
なぜか、彼女を見るのは俺だけでいいという独占欲が駆られた。
この俺が一目惚れ?いや、ない。気のせいだろう。一目惚れだなんて皆から笑われてしまう。
店主の後に続けば、中原を豪華な善が迎えた。
俺は踊りを見に来たんだけどな、心の中で中原は零すもの、折角用意してくれたのだと
善に手を付けながら店主の話を聞いておく。
ある程度すると、話が終えた。
ちびちびとお酌をしてもらった日本酒を飲む。
何かの気配。
だが足音は無い。
ふわりと香るあの時の匂い。
「っ…」
息を呑んだ。
嗚呼、此奴は天女様かなんかか?
馬鹿馬鹿しい。そういう奴だって此奴を見れば天女様と思うだろう。
美しい美しい女。
金色の簪がよく女に似合う。
女は化けるというがこれはちと化けすぎじゃねぇか?
酒の手が止まり彼女に釘付けになった。
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嘘吐き姫(プロフ) - 中也さん、今度は戦国武将ですか…敵がバッサバッサですね(笑) 名前っぽいペンネームも素敵ですけど、双黒尊い…って、率直&ドストレートで、私は結構好きです!名前変わっても双黒尊い…さんはM・T(マイ・天使)です(( (2019年11月8日 19時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
双黒尊い…(プロフ) - リアさん» それは大変失礼いたしました。私がこのCSSを気に入っているという諸事情であまり変えたくないのです。本当に申し訳ございません。もうお知りになっているのかはわかりませんけれど右側にあるCSSという所を押せば、普通のに切り替わりますよ。 (2019年11月8日 16時) (レス) id: f17b921f9b (このIDを非表示/違反報告)
リア - あの小説のほうはすごく面白いのですが背景が桜の花びら、字が白なので大変読みにくいです壁紙を変えてください (2019年11月8日 16時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - 双黒尊い…さん» リクエストください(笑) (一つ前のコメント、レスつけそびれちゃいました、すみません!) (2019年11月6日 22時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リクエスト消化、ありがとうございました!びびりみたいなコミュ症みたいな夢主ちゃんめっちゃ可愛かったです(眼力) あと、「俺ってそんなに怖いのか」っていう中也さんの心の叫びにちょっと笑っちゃいました(笑)リクエスト停止を解消したら、是非私の作品にも (2019年11月6日 22時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:双黒尊い… | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kouki69632/
作成日時:2019年10月22日 19時