天下の双黒様だって彼女様には敵わない 【双黒/短編集】

# ページ25

生徒は、敵の相手をしながらも、私の方を不安な目で見てきた。
こっちの勝ち、言うように男は手を伸ばした。
ゆっくり、ゆっくりと手を伸ばした。

「っ…！」

男の手はザシュッと斬り付けられている。

「はっ…行くと思った？行かねぇよそっち側なんか。治が行かない限り」

私の手に持っているナイフにべっとりとついている血。
私は血を払うようにナイフを振った。地につくべっとりとした血。
生徒は、皆ほっとしたように息を吐いた。

「ッチ…」

顔を歪める男。
舌打ちを零し、理想通りにいかないというように首元をガリガリと書いた。

「脳無、いけ」

脳無、そう呼ばれた先程の気持ちわるい化け物。
脳無は走り、私を殴ろうとした。

「っ異能力、地獄の花っっ」

叫ぶ。
瞬時に異能力を発動した。
目を丸くさせている生徒をよそに、私の異能力である黒い綺麗な花は脳無の足に纏わりつき
そして段々大きく成長していった。

「っは…」

声が漏れる。
なんで、なんで生命力が吸えていないの？
死ぬはずなのに、なんなんだ。今まで散々化け物の様だと言われていたが此奴の方が
化け物じゃないか。死なないなんて。

ブチッと嫌な音を立てて、切れる黒の花。
花は地へと潜っていった。

「ッッ…！」

思いっきり腹を殴られた。
宙に浮かぶ体。酷く痛むお腹。

「っ中原幹部と同じとか…」

ふらつく体。
なんとか体に鞭を売って立ち上がる。
飛びそうになる意識を繋げるように私は歯を食いしばった。

「っはぁっ…」

グッと足に力を入れ、来た、普通の敵を殴り飛ばしたり異能力を発動させたりして殺していく。
血が舞い、血がこびりつき、銀色に光る刃。お揃いのコートは血まみれになってしまったが
治のプレゼントであるネックレスは無事であった。

思いっきり殴られる頬。
ぼきぼきに折れた骨。
変な方向へと曲がる足。

それでもなお、私は立ち上がる。

「っ…」

ぺっと、口の中に血が入り血と混じった唾液をはきだした。
もう、私が相手にならないと脳無は思ったのか、生徒に手を伸ばした。
生徒は私から体術を習っていたんだ。ある程度強いだろうけどこの化け物には敵わない。

「っやめろぉぉぉぉぉっっっっ！！」

叫んだ。叫んで叫んで叫んで。
その子たちは、私の心を溶かしてくれたんだ。
この子達は守る、誓ったんだ。
痛む体に鞭を打ち立ち上がった。

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