天下の双黒様だって彼女様には敵わない 【双黒/短編集】

# ページ23

「…ポートマフィアの幹部。それが私の職業」

シンと静まり返る此処に響くには十分すぎた。
マフィア、と最後についているから察する子もいたが分からぬ子もいた。

「…闇の仕事だ」

言った。
嗚呼、皆はどうする。何を思う。
チラリと反応をうかがった。

「…まぁなんとなく想像は出来ていたな」

相澤は言った。

「は…？」

声が漏れる。
此奴は馬鹿なのか。マフィアの長のようなポートマフィア。
そのポートマフィア幹部を止まらせるなんて自ら死に行くようなもの。

「お前はナイフも持っている。銃も持っている。最初は警察辺りかと思ったが最初に
血の匂いがした。まぁ闇の仕事だとは理解していたよ」
「っ馬鹿なのか！貴様は！ポートマフィアはそこらのマフィアとは比べ物にならないんだぞ！
殺されるという事は理解していたのか！？」

こんなにも、怒鳴るのは初めて。
こんなにも、心配するのは初めて。
それだけ、彼等に私の心が動かされていたという証拠であった。

「別に俺を襲ってきたら刑務所にぶち込むだけさ」

ふっと表情を和らげる相澤。
思わず、彼の度胸に、くくっと喉を鳴らした。
嗚呼、ここは退屈させられない。驚くことばかりだ。

暫く話し、質問タイムという事になった。

「何か、質問は」

私が聞けば、はい、と緑頭、緑谷が手を上げていた。

「なんだ」
「え、っと…あの、治って、誰ですか？」

ピキッと表情が固まるのが分かった。
すっと笑から無になる。

「…治は…治は…」

嗚呼、会いたい。寂しい。迎えに来てよ治。
抱きしめて欲しい。撫でて欲しい。キスしてほしい。
色んな欲が血液の様に巡り巡り巡る。

「…私の、彼氏」

大切な、人。
そう言った。
会いたいよ会いたいよ。
涙が出てきそうになって、堪える。

女子から主に色んな声が上がってくる。

「A先生！その治さんのお写真は無いのですか！？」

八百万が言った。
矢張り女子はみな恋バナが好きなんだな。
興味津々の彼等に対して、一人顔を歪めた生徒がいる。

「…あるよ」

ピッピッと携帯を操作して治と遊園地に行ったときの写真。
遊園地は、森さんが偶にはデートしてきなさいという事でディズニーランドに行ったときの写真。

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