#出会いの窓/中原中也 ページ11
カァカァと烏の鳴き声。オレンジ色の日がガラスを通る。
嗚呼、日が暮れたのだなと理解した。
コンコンと扉を叩く音。ギィと扉が開いた。
「A、ご飯持ってきたわよ」
お母様の手には豪華なご飯がずらりと並んでいる。
お母様はお盆を机の上に置いた。
「お母様…」
お母様と呼べばお母様は嬉しそうに、幸せそうになぁに?と言いながらにこりと笑った。
…いいえ、何もありませんわ。あらそう?
お母様はじゃあねと言って私の部屋を後にした。
ほかほかと湯気が立つ美味しそうなご飯を口に運ぶ。けど、誰もいなくて。
寂しくて寂しくて寂しくて。全然ご飯の味なんか感じられなかった。
ゆっくりと噛んでもいくら噛んでも味がしなかった。
「寂しいなぁ」
私がぼそりと口から零した言葉は虚しくも宙に溶け消えていった。
*
カァテンの隙間からチラリと太陽が覗き込む。
しょぼしょぼと今にも下がりそうな瞼。
「ふ、ぁぁ…」
欠伸を零しながらググッと背伸びをする。
しゃっとカァテンを開ければふわりと暖かい春風が入ってくる。
チュンチュンと雀の鳴き声が聞こえる。
綿毛がふわふわと空を飛んでいて嗚呼、春風が運んでくれたんだなと思った。
「っ…!?」
ぶわっと強烈な風が入り込む。
カァテンが大きくひらりと揺れ目の前には少年。
私と同い年くらいだろうか。思わずさっと避ける。
少年は片手で帽子を押さえピンと前に足を出しキキィッとまるで車が急ブレェキをかけているよう。トンッと軽い音を立てて少年は私の部屋に着地した。
「っえ…?」
少年の体にはたくさんの切り傷。
中には刃物、ナイフで切ったような切り傷。
ポトリと音を立てて部屋に血が滴り落ちた。
ガタガタッとすごい勢いで何かが上がってくる音。
「っ隠れてっ」
少年の背中をグイグイと押す。と言っても傷には手を当てぬようにだ。
「はっ!?ちょ、なんだよっ」
少年はされるがままにクロォゼットの中に入る。
パタンと扉を閉めた時に部屋の扉がガチャリと開いた。
私は急いでお母様の方に、部屋の扉の方にくるりと体を向けた。
「…A…そこに何を隠しているの」
「いっ、いえ、何も隠しておりませんわ」
ギュッと見えない用に扉の取っ手を強く握った。隠れている少年の規則正しい呼吸音が聞こえる。
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嘘吐き姫(プロフ) - 中也さん、今度は戦国武将ですか…敵がバッサバッサですね(笑) 名前っぽいペンネームも素敵ですけど、双黒尊い…って、率直&ドストレートで、私は結構好きです!名前変わっても双黒尊い…さんはM・T(マイ・天使)です(( (2019年11月8日 19時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
双黒尊い…(プロフ) - リアさん» それは大変失礼いたしました。私がこのCSSを気に入っているという諸事情であまり変えたくないのです。本当に申し訳ございません。もうお知りになっているのかはわかりませんけれど右側にあるCSSという所を押せば、普通のに切り替わりますよ。 (2019年11月8日 16時) (レス) id: f17b921f9b (このIDを非表示/違反報告)
リア - あの小説のほうはすごく面白いのですが背景が桜の花びら、字が白なので大変読みにくいです壁紙を変えてください (2019年11月8日 16時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - 双黒尊い…さん» リクエストください(笑) (一つ前のコメント、レスつけそびれちゃいました、すみません!) (2019年11月6日 22時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リクエスト消化、ありがとうございました!びびりみたいなコミュ症みたいな夢主ちゃんめっちゃ可愛かったです(眼力) あと、「俺ってそんなに怖いのか」っていう中也さんの心の叫びにちょっと笑っちゃいました(笑)リクエスト停止を解消したら、是非私の作品にも (2019年11月6日 22時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:双黒尊い… | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kouki69632/
作成日時:2019年10月22日 19時