【d!】完全にハメられた【tn】

#３０ ページ30

【トントン】


夕飯の時間になると、みんな騒がしくなった。
ゾムなんかはシッマに食害を始め、その八つ当たりのようにシッマはロボロに食害を始める。
…まあ、ロボロには通用せえへんけど。

Aはと言うと、特に何も喋らず静かにパンを食べていた。目が合うと逸らしてくるのがひどく気に入らない。

と、こっちにあるジャムを凝視するA。
意地悪してやろうかとも考えたが、良心が負けて取ってやる。

すると、『ありがとうございます』と少し嬉しそうに笑った。
ドキッとした胸の高鳴りを抑え、ポタージュを飲む。

すると、総統である彼が話し始めた。


「諸君、話がある。」

その言葉だけでかなり静かになる空間。
それを確認すると、グルッペンは口を開いた。

「明々後日。我々はAにスパイとしての実力を見せてもらう。」

「元ですよ、元。」

すぐにツッコミが入る。
まあ、この仕事を通してスパイがそれでも嫌なら、ここを辞める設定になっているし無理もない。

そう、あくまで『設定』。


「さっき話し合ったんだが…同伴はトントンに頼んだ。」

「任せとき。」

まだ具体的な任務は伝えられていないが、Aのことを監視しろ、という令は出ていた。

『え？』と言ってフォークを思わず落とすA。
メイドが素早く換えのフォークを渡す。


「…なんや。何か言いたそうやな。」

『え？』と言われたのが少し癪に触り、言い方も荒っぽくなった。

「い、いや…。なんでトントンさんなのかな…と。そもそも、あの約束の日から１日早められてません？」

もっともな疑問。
それに、グルッペンは答えた。

「トントンならお前が逃げようとしても捕まえられる。…理由は実際検証されているから分かるな。

そして、日にちが前倒しになった理由は、これだ。」


嬉々として語ると、手からポスターのような物が。
…まったく、書類整理サボってる間になにを持ってきてんねん…。


大きく掲げたそれには、『国交パーティ』と書いてある。…ほーん、あながち変なものでもなさそうやな。

要は、様々な国のトップや財閥たちが集まり、親睦を深めよう、という話だ。
つまり、そのパーティに潜入して欲しいがために、日程を早めたわけだ。

…で？


「グルさんも出席するんやろ？」

「もちろん。…だが、１人だけ財閥でも無ければ国のトップでもない奴が紛れているらしく、自国で開くパーティとして、それは見逃せない。」



ふうん、なるほど。

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