また明日。《２》

♯80 ページ30

「……え？ちょっと？」


壱馬「うん。ちょっとでいいから……あ、やっぱ無理やんなごめん……」


「無理って言うか、もうあまり残ってないんですよね…」


壱馬「そっか、ごめん(笑)」


「こっちこそ、ごめんなさい……あ、私今持ってますよ？アトマイザーに入れて………でもやっぱり中身入ってないかも？」


振ってみたけど、ほとんど空っぽだった


壱馬「持ち歩いてんのに空って(笑)」


「お守りみたいな物なんです。壱馬さん、手首出してください」


壱馬さんの手首にシュッとひと振りした


壱馬「貴重な香水やのに……」


「また、作ってもらいます(笑)」


壱馬「……うん、これこれ。……やっぱりこの香り好きやわ(笑)」


「尊人さんに聞かせたいですその言葉(笑)喜びますよね絶対(笑)」


壱馬「これ、Aブレンドなんやっけ？」


「はい(笑)似た香りも出会った事ないんですよね」


壱馬「俺も無い(笑)」


「また貰ったら3プッシュくらいならあげますよ(笑)」


壱馬「3プッシュ！？めっちゃケチやん(笑)」


「そんな事言う人にはあげませーーーん(笑)」


壱馬「あーごめんっ！(笑)」


こんなにもこの香水を気に入ってくれてて、尊人さんの作った物が褒められてる事が単純に嬉しかった


「嬉しいです。尊人さんの事ちょっと肯定された気がして」


壱馬「俺が肯定してるのは、香水やけどな？」


「それでも嬉しいです(笑)ありがとうございます(笑)」


壱馬「……帰るで｣


「はい(笑)」


最初に声を掛けられた時も、香水の事だった
壱馬さん、匂いフェチなのかな？

嗅覚って、五感の中でもそんなに高い位置じゃなくて、全体の3.5%程度しかないらしい

でも、香りって記憶に残りやすいって私は思う
壱馬さんだって、そう思ってるはず

だからここまで、あの香水に拘るんだろうね……

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