ニーナ - 4 ページ4
side : izw
言葉が出なかったのはAに対する失望じゃない。信じられなかったが故なのだ。
風俗、という言葉は当然聞いたことがあった。
この間テレビのドキュメンタリーで違法風俗を取り締まった、なんて特集をしていたし、世に一般的に広まる言葉であることに間違いはない。
また、職業そのものを蔑視しているわけでもなかった。当たり前だ。
自身の身体を売ることには相応の覚悟がいるだろう。女性なら尚更。軽い気持ちで始められることじゃない。
そうだ、そうなのだ。
────だからこそ俺は、Aがその職に就いていることが信じられなかったのだ。
「……、何で？」
抱く疑問としては当然のものだった。
俺が知っているAは、純粋でウブだった。勉強に熱を注いで恋愛は二の次であったし、友人をとても大切にしていて。
大学2年の頃、そんなAに惚れ込んで告白をした奴がいた。俺の友人だった。
どうせ玉砕するだろうなと踏んでいたのだけれど、結果は案の定玉砕。「恋愛のことなんて考えられない」なんて理由だったらしい。
2年経ち、俺は大学院への進学を決意した。
Aは就職活動に追われ、俺は勉強に追われた。そこからのAの顛末は俺だってよく知らない。
「………」
Aは黙っている。
……否、黙りながら言葉を模索しているようだった。膝の上に乗せている手が静かに震えている。
アイスティーにはどちらも口を付けない。
厚化粧の奥、ふと大学時代のAを見たのは、何かを堪えるような彼女が痛々しかったからで。
「…………、彼氏、が。」
「………」
「彼氏が、風俗、経営してて。
………それで、人手が足りなくて。……働けって、言われたから。」
今度こそ俺は、Aを映している目を僅かに見開いた。
彼氏がいることにまず驚いた。俺の中のAはまだ大学時代で止まっていて、恋愛のことなど考えられなかったはずなのだ。
彼氏がいて、それで、風俗を経営していて？
人手が足りないと頼まれたから働いてるって、もう何から何まで追い付かない。
Aは就職組の中に確かにいたはずだ。
結果は知らないけれど、それが今こうなってるって、一体。
「………何だそれ、」
口を、そんな言葉が突く。
Aと目が合った。口は未だ、開いたまま。
「……おかしいだろ。お前もそいつも。」
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r(プロフ) - コメント失礼いたします。ひっそりと『マリア・テレジアへ賛美歌を』のAルート／Bルートお待ちしております……！ (2022年5月8日 13時) (
レス) id: 4f9004a1a0 (このIDを非表示/違反報告)
まるまいん - はじめまして、本日初めて作品を知りシリーズを最初から最後まで全て読ませていただきました。登場人物のリアリティー、簡潔ながらわかりやすい描写と気になるストーリー構成、どれもとても魅力的でした。続きも楽しみにしております。 (2022年4月25日 4時) (レス) id: 3aac2cf622 (このIDを非表示/違反報告)
みゃお - 初めてコメントします！どのお話も本当に引き込まれて大好きです…！ラブレターには名を記せの続編がどうしても読みたいので、いつか書いていただけたらと思います。よろしくお願いいたします！ (2022年4月18日 0時) (レス) @page21 id: d140b06251 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - 更新されていてびっくりしました…！ これからも応援させて頂きます。 (2022年4月1日 0時) (レス) id: db21360bfa (このIDを非表示/違反報告)
凪(プロフ) - 良質な読みものに心臓がドカドカする感覚をものすごく久しぶりに味わって感動しています…これからも楽しみにしています！！どうかご無理はなさらず！！ (2022年3月31日 0時) (レス) @page33 id: 86acd73901 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：290円
| 作成日時：2020年10月24日 6時
