本気 ページ6
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「………結婚?」
「はい」
「誰が」
「僕が」
「……誰と?」
「Aさんと」
……なるほどね、わかった。話が通じていない。それだけは理解した。
まずひとつ確認をするならば、私と山本くんは恋人ではない。……いやこんなこと確認する前から自明なんだけど。
そしてもう一つ、『結婚』というのはおおよそ恋人同士がするものである。
それを踏まえた上で、山本くんはこう言った。「結婚してください」。
「………」
一瞬ドッキリという文字が脳内を通過し、頭の中の福良さんがそんなことしねえよとそれを一刀両断した。
確かにそうだ。QuizKnockじゃ度々ドッキリの動画が上がるけれど、それも全部『学び』に繋がるものだけ。申し訳ないが、ただのプロポーズドッキリが何の学びに繋がろうか。
そもそも私はYouTubeの方に出演はおろか名前が上がったことすらないし、ドッキリの線はない、として。
……として、考えたら更に不可解になった。いやだとしたらこれは何なんだよ。
「………ごめん、全くわからない。」
わからない。イエスでもノーでもない、わからない。
彼がどんな意図を持っているのかも、そして私に何を求めているのかもさっぱり。期待通りのリアクションができなくて申し訳ない。
私は訝しげに山本くんへ視線をやった。
視線と言葉で説明を求められた彼は、不思議そうにこちらを見つめ返す。……いや見られても。
「というか何これ。どういう意図なの?」
「意図も何もプロポーズですよ」
「いやそういうことじゃなくて」
これじゃ埒があかない。仕方なく質問の系統を変えてみる。
「……じゃあ何でプロポーズなんてしたの?」
「何でって、……そりゃ当たり前でしょ。」
山本くんは小さくあははと笑い、背もたれに体重を乗せた。
やけに余裕たっぷりだ。いつもの笑顔はどこへやら、こちらを伺うような口角の上げ方が冷や汗を流させてしょうがなくて。
「好きだからです」
もう誰がなんて尋ねる気力はなかったし、返ってくる答えだって何となく予想できてしまった。
わからない。理由も意図も聞いたはずなのに、不思議と空をつかまされてる気分だ。
……故に私は、次の質問がこれしか思い浮かばず。
「………本気で言ってる?」
そして山本くんは、ある程度予想できていた答えを当たり前のように返すのだ。
「本気ですよ。全部」
そう、ほんの少しだけ首を傾げて。
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霞(プロフ) - すごく好みの雰囲気です…。更新楽しみに待ってます!!頑張ってください (2021年2月23日 23時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
オレオ_ッピ推し(プロフ) - 何この話どタイプ……気長に更新を待ちます。( ºωº ) (2020年11月5日 1時) (レス) id: dfcf88994a (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 私も大好きです…更新楽しみにしてます( ^ω^ ) (2020年10月29日 21時) (レス) id: cb54059665 (このIDを非表示/違反報告)
こあら(プロフ) - 何これ好きぃ……………… (2020年10月19日 8時) (レス) id: df8e2a19f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:290円 | 作成日時:2020年10月9日 19時