めぐしうつくし - 6 ページ6
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陽が落ちて来た頃合いだった。
残していた仕事を綺麗さっぱりと片付け、少々早いながらも退勤すべく荷物をまとめる。
斜向かいに座っていた山本くんはちらと私を見て「もう帰るの？」と一言。今日は特に彼とたくさん話した気がする。
「うん。大体仕事終わったし」
「そっか。お疲れ様」
軽く片手を振った山本くんに合わせるようばいばいと手を振り、荷物を肩に掛け周りのライターさんに挨拶。
河村さんは対角線上の席でパソコンと睨めっこだ。最後に社長の伊沢さんに一礼、携帯で時刻を確認し、扉を閉めて廊下に出る。
今日でちょうど1週間だった。
何がって、私が意図的に河村さんを避けるようになってしまってからだ。
今日のお昼、山本くんの質問への返事はアレで合っていたはずである。
好きなわけじゃない。
…ただちょっと、何となく気まずいというか。顔を見るだけで緊張してしまうというか。
程度の差はあれ人並みに恋をしてきたはずだし、これでも女子だ。恋バナなんてものに興じる機会はたくさんあった。
今回のそれは、そのどれもで感じた感情とは少し違う。
緊張する。
時折気になってしまう。
…当たり前だ。真っ向からあんな好意を持っていると伝えられたのなんて初めてだから。
「……」
考え事をしていたら足が止まっていた。
慌てて靴に右足を突っ込み、つま先をとんとんと叩いて踵を直す。
1人だと色々なことを考えてしまっていけない。思考が雁字搦めになって抜け出せなくなる。
靴に左足を突っ込んだ。
壁に手を突き、人差し指で踵を直す。
息を吸った。冷たい。
扉に手を掛けた。
更に冷たいであろう冬の空気に身を投じようとし、て。
「……え、」
振り返った。
閉めたはずの扉が、開く音がしたからだ。
振り返った私が、目を見開いて固まってしまったのは。
「……な、…」
───そこにいたのが、今まさに私の頭を占領していた河村さんだったから、で。
目が合った。逸らせない。
途端に心臓は緊張を伝え、どくどくと早鐘を打つ。
口角を緩めた。緊張を隠すためだった。
不恰好に笑いながら、何でもないよとでも言う風に私は首を傾げる。
何故だかはわからなかった。
何故だかはわからなかったけど、緊張しているのだと悟られたくなかった。
「…A」
河村さんが私の名を呼ぶ。
ああもうダメだと、何故かそう思った。
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noi - すみません。小説とあまり関係ないかもしれませんが、「リザルート」ってどんな意味なのですか？よく似た響きで「リゾルート」という音楽用語はあるのですが、聞いたことがなかったので気になってしまいました。 (2022年11月27日 20時) (
レス) @page29 id: f637924c1f (このIDを非表示/違反報告)
橘美桜(プロフ) - 初めまして、最近こちらの界隈にはまった者です。290円さんの書かれるお話がとても大好きで何度も何度も読み返しております。ひっそりと『マリア・テレジアへ賛美歌を』のAルート、Bルートお待ちしております、本当に素敵な作品をありがとうございました！ (2021年10月7日 19時) (レス) id: 0e6ceacda8 (このIDを非表示/違反報告)
りべろ(プロフ) - 初めまして…！290円さんの書くお話がとても好きです… 疑問なんですけど、『マリア・テレジアへ賛美歌を』の意味を教えていただきたいです！これからも応援してます！ (2021年7月2日 22時) (レス) id: d1e6d9dde1 (このIDを非表示/違反報告)
春(プロフ) - 初めまして！290円さんの書くお話がとっても好きで何回も読み直してキュンキュンしてました、、。最後のお話、涙が止まらなくて朝から泣きながら読んでます、、。続編楽しみにしてます。これからも応援しています！ (2020年10月11日 6時) (レス) id: b2b76b14bb (このIDを非表示/違反報告)
早瀬 - 更新お待ちしておりました！綺麗な世界観がとても好きです。これからも楽しみにしています！ (2020年7月15日 14時) (レス) id: 0963beb20e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：290円
| 作成日時：2020年3月13日 20時
