クロネッカーが見た三千世界〈 QK 〉

Aメロ、コーラス、淡々 - 2 ページ24

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彼女──目の前でドリアを頬張り、熱い熱いと1人騒ぐAは、自身と福良との関係を『倦怠期』であると称する。


…いや別に、倦怠期だからと言って他の男と昼食を取って良い理由にはならないと思うんだけど。それだけで十分な理由に聞こえてしまうのだから、妙に便利な言葉だ。




俺とAは友人だ。


──と、一口で言うには少々足りない。友人は友人であるけれど、俺とAは高校からのそこそこ長い知り合いで。


またそこそこ仲も良く、言うならば幼なじみもどき。俺たちの関係はと言えばこれに尽きる。





「…何？そんな見られてると食べにくいんだけど。」


「いや別に。…あとここ、ソース付いてる」


「うそ。もっと早く言ってよ」




示された辺りを雑に手の甲で拭い、Aは再度ドリアに口を付けて熱い熱いと騒ぎ出した。冷ませば良いのに。




その長い付き合いの友人、Aと比較的仲の良い福良が付き合い始めたと聞いた時、最初に湧き上がった感情は素直に驚きだった。



見ての通りAには女らしさと呼べるものがない。付き合いが楽と言えば楽なのだけど、交際に至れるかと言えば───…ああいや、その話は置いといて。




それにだ。俺はコイツと知り合ってからと言うもの、Aが誰かと交際中だなんて話は一切聞かなかったのである。

否、俺が知らないだけで誰かと交際していたこともあったのやもしれない。…何なら福良とのそれも人から聞いて知ったくらいだし。




いや、まあ。だとしてもだ。


俺は『誰かのものであるA』と関わるのはこれが初めてで、正直なところ此奴への接し方が本当にわからなかった。



Aと福良の話をすることはあれど、思えば最近その2人が話しているところすら見かけないし。


福良を思えば間違いなく2人になるのは避けた方が良いのだが──当のAがこれじゃあな。






「…あ、そうだ河村」





と、思考を遮る様にパッとAが顔を上げた。その口元には再度ソースが付いている。…もう指摘する気すら失せるな。






「あそこの駅の中にさ、有名な洋菓子屋さんが支店出したんだって。食べ終わったら行こうよ」





そう語るAは、先程俺がした話なんて忘れているようで。


…いや、コイツを甘やかす俺が悪いのも重々承知なのだけれど──俺はこの愛らしさにどうも弱くって。





「分かった。…あとここ、またソース付いてる」


「え、うそ。もっと早く言ってよ」






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