私は日々、たくさん悩み続けてきましたが - 5 ページ47
.
「……はい?」
そう言わざるを得なかった。何を言っているのだろうこの人は。…どっちって、そもそもなんで?
人間関係にも気を付けねばならない。それは分かる。伊沢さんは社長であるし、人と人との関わりを大事にする職場で悪い雰囲気があっちゃいけない。
──でも、だからと言って。
私のお相手にまさかその2人が上がるなんて、思いもしなくって。
片や川上さんはその、……まあ、想い人、なわけだけど。須貝さんに至ってはよくアドバイスをくれるだけだ。
それに最近は1ヶ月前ほど話す回数が多いわけではない。席だって隣は須貝さんから福良さんになったわけで。
「…え、えと、…川上さんは、最近よく話してくださるだけ、ですし。
そもそも須貝さんもお手伝いしてくれてるだけですよ。…私が中々馴染めてなかったんで」
良心を誤解させたまま伝えるのは良くない。主に須貝さんのことに対してだけど、私はちゃんと弁明しておくことにした。
須貝さんには妹がいる。だからこそ兄気質なあの人は私に世話を焼いてくれるわけだし。
…川上さん、は。…確かにそういう関係を望んではいるけれど、残念ながらまだそれには遠い、し。
「…そもそも、私如きがあんな素敵な人たちなんておこがましいですよ」
苦笑い。川上さんを想いながらこんなことを言うのは大分息苦しかったけれど、本当なのだから仕方ない。
頭では何となく分かっているのだ。
川上さんの隣が似合うのは私みたいな人じゃない。ずっと見てきたからこそ感じる。
……だからといって諦めるかと言われれば、そうではないのだけど。
「……」
「……」
沈黙が落ちた。伊沢さんが黙るのが何だか珍しくって、いつのまにか俯いていた視線を上げる。
「…え、」
と。
ふと見上げた伊沢さんは驚いたような顔をしていた。その反応がどうしようもなく予想外で、思わず言葉が漏れる。
何だかその表情に既視感を感じたけれど。
それがどこで感じたものなのかは思い出せなくて。
「…ものすごい酷なことを言うようだけどさ」
全てを理解したような伊沢さんは、苦笑いとも微笑みとも形容し難い笑みを浮かべた。
「でもごめんね、あまりにも可哀想で」
誰が、何で、どうして可哀想なのかを 伊沢さんは教えてくれなかった。
「……。須貝さんは、Aちゃんのこと好きだと思うよ」
福良さんと言い伊沢さんと言い、頭の良い人はすぐ私を置き去りにする。
→
どうやら出来の悪い葦であるらしく - 6→←人であることの難しさを常々感じております - 4
1304人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…! (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです!後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:290円 | 作成日時:2019年9月25日 17時