こうかは ばつぐんだ！ - 4 ページ37
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「え、」
山本が目を見開く。振り払われた手を信じられないような様子で見つめ、次いで私と視線が絡まって。
「もうやだ、それ。そういうことするのやめて」
思わず私は胸に右手を当てた。速い鼓動を打つ心臓。何故だか目頭も熱いのだ。
静まり返ったオフィスに今更気付く。そこまで大きな声を出したつもりはないのに、みんながこちらを見ていた。
「……え？」
山本の声じゃない。多分こうちゃんか福良さんの声。
目の前の山本は、妙に落ち着き払った表情で私を見据えている。奇妙なくらい怖い顔、で。
こんな顔を見るのは初めてだった。
いつも私に対しては笑っていたはずの山本。怒っているわけでもなく、何を考えているのかわからない表情。
「…もうやだ、」
絞るような声が出た。
嫌だ、嫌だった。何もかもが嫌だった。
明確な言葉を言わない山本も、それを軽くあしらうことができない自分も、こっちの気なんて知らずに飛躍するみんなも。
……哀れなくらい、心の奥底じゃ期待していた自分も。
自分が一番分かっているつもりだった。山本は私をからかっているだけ。明確に言葉にしないのも、きっと遊んでいるんだって。
そう自分を戒めて、奥に閉じ込めた想いに気づかないふりをしていたのだ。
それなのに、伊沢さんがあんなことを聞くから。
怖くなってしまった。答えを聞くのが嫌だった。哀れな期待を崩してしまいたくない。こんなの夢や幻の類だと知っているのに。
──…山本に、好きじゃないなんて言われたくなかった。
「……」
暖房の音だけが聞こえる。誰も動かないし、何も言わない。
気持ち悪かった。
遊ばれていると分かっているのに、本気にしてのめり込んでしまう自分がとんでもなく嫌だ。
「Aちゃん」
山本が私の名を呼んだ。溢れそうな何かを抑えるように唇を噛み、先ほど脱いだ上着を引っ掴んで踵を返す。もうこの場にいられない。
走り出したと同時に背後から聞こえるこうちゃんの声。強く強く噛んだせいか、口内には血の味がした。
→
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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (
レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…！ (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです！後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：290円
| 作成日時：2019年9月25日 17時
