こうかは ばつぐんだ! - 2 ページ35
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「……」
「…えーっと、」
「……」
「…大丈夫、ですか?」
時刻は夕方。とはいえ冬だから日の落ちも早くって、まだ6時なはずなのに外は暗い。
こんな中、私と後輩のこうちゃんが2人外にいる理由はひとつ。コンビニへの買い出しジャンケンに2人揃って負けたからだ。
「今日も…っていうか今日は特に山本さんすごかったですもんね。…疲れてます?」
「…まあ」
「…ご愁傷様です」
そう、今日は特にすごかった。何がって山本が。
いつも以上に絡んで来たし、いつも以上に引っ付いて来たし、いつも以上に…何て言うか、熱量?がすごいのだ。
いつも以上に距離は近かったし、体を寄せられる度にふわりと香る柔軟剤の香りは心臓にとっても悪い。私のためにもそろそろやめてほしい。
さっきも買い出しに出かけるだけなのに色々とうるさかったし、一体何が心配だというのだろう。
「……でも、結局どうなんですか?」
「うん?」
溜息で会話が途切れた数秒後、私よりひとつ多くビニール袋を持ったこうちゃんがそう言った。視線をそちらへ向け軽く首を傾げる。
「山本さんのこと。どう思ってるんですか?」
遠慮がちに言われたのはそんなこと。
目がゆっくりと逸らされる。「前から自転車来ますよ」そう言われ、私は慌てて前を向いて。
「山本さんはどう見ても好きでしょ、Aさんのこと」
「……」
思わず言葉に詰まったのは、別に山本への気持ちを言いたくなかったからじゃない。
「…そうかな」
「そうですよ。あんなの見てればわかるじゃないですか」
そう言い切ったこうちゃんに思わず苦笑い。ビニール袋を握り直した。
何が楽しいんだかものすごくにこやかな顔。無駄に優しい声色。そして何より近い距離。
ずっとこうだ。ずっと。
いつからだったか、同い年の山本祥彰という男は私に対してそんな態度を取る。ある日を境に突然に。
私は返答に困って冷たい返事しかできないのに、山本はずっとニコニコニコニコ。本当に、何がしたいのだろう。
「どうだろうね。
…山本、私のことたくさん褒めてくれるけどさ。…私一回も好きだって言われたことないよ」
人並み以上にモテているなのに何故私に構うのだろうとか、何を考えているのだろうとか、私には山本が分からない。
あれだけ分かりやすそうな癖に、あいつは何一つ悟らせてくれない。
単純に、本当に単純に。
私は、山本が考えていることがわからない。
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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…! (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです!後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:290円 | 作成日時:2019年9月25日 17時