がんばれ神様 - 2 ページ29
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「……」
「…河村?」
「……はー…」
「そんな落ち込むくらいなら意地悪しなきゃいいのに」
夜も更け、オフィスにいる人物もそれなりに少なくなってきた頃。自身の机に突っ伏し、溜息と唸り声を上げる男が1人。名は河村。
奴は今、普段神だ神だとキャラ付けをされ、崇め奉られている人とは思えない格好を晒しているわけだけど。
「ガチで嫌がる顔された…」
何故こんなことになっているのかと言えば、その理由は1つ。色恋沙汰だ。河村には想い人がいる。
いい歳した大人なのに河村は好きな子にちょっかいをかけてしまうタイプで、今日も今日とてその子──Aちゃんに絡んでいたわけなのだけど。
それを見ていた伊沢が仲の良い2人を「河村夫婦」と呼称したところ、Aちゃんがガチで嫌がる顔をした、らしい。
で、それが原因で河村は落ち込んでいると。中学生か。
「それさあ、やっぱ河村さんがいっつもちょっかいかけてるからじゃねーの?」
キーボードを打ちながら同じくオフィスに残っていた伊沢がそう一言。ド正論だ。
河村がちらと顔を上げ、伊沢を見やる。どこか恨みがましい目だ。…まあ直接的な原因はあいつだからね。
「…いや、俺も辞めようと思ってるよ。優しくしようって努力してるし」
「でもちょっかいかけてんじゃん」
「……」
ガツン。また河村が机に突っ伏した。あー、傷抉っちゃったかな。
普段はあんなに余裕ありげなのに、こうなる河村を見れるのはなかなか貴重な気もする。Aちゃんの前でもそんだけ素直になれたら良いのにね。
「……辞めようと思ってるよ」
「うん」
「………でもなんか、気付いたらそうなってる」
「……」
伊沢と目を合わせ、頷き合う。
……なるほど、これは重症だ。本当に小学生じゃんそれ。好きな子目の前にしてどう接したらいいかわかんなくなっちゃうアレじゃん。
未だ唸り声を上げる河村を尻目に、俺と伊沢は溜息を吐く。何だか可哀想に見えて来た。
……まあ、でも。
神と呼ばれる河村がこうなってるのは面白いし、暫くはこのままで良いか。
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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…! (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです!後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:290円 | 作成日時:2019年9月25日 17時