キューピッドの気苦労 - kwkm . izw ページ4
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「拓朗、拓朗拓朗！」
大学の構内を歩いていた時だった。
聞きなれた声が背後から近寄り、トントンと背中を叩く。
ああまたか。そう思いながら振り返った先、思った通りの人物は楽しげに笑顔を浮かべてそこに立っていて。
「昨日の動画見たよ！相変わらずかっこよかった！伊沢さんが！」
突然こうして背後から話しかけられるのにも慣れてしまったのは、恐らくというか確実にこいつが原因だ。
「髪も声も顔も服も全部良かった…！あ、あと企画も面白かった！福良さんに伝えといて」
「Aが直接言えばええやん」
「え、いいの？！ じゃあ今度オフィス行く！」
上機嫌で話し出すこいつは名前をAと言う。
俺とこいつは幼少期からの幼なじみで、なんの偶然か同じ大学に通っているのだけど。
「伊沢さんさ、どんなお菓子が好きなんだろ。差し入れとか迷惑じゃないかな」
返事もしていないのに聞いてもいないことをペラペラと話し出すのはこいつの悪い癖。
「甘すぎてもダメかなあ。手作りだと重いって思われたりしそうだよね」
…そう。
こいつは今、何を思ったか我らが編集長の伊沢拓司に並々ならぬ恋心を抱いているらしい。
だから繋がりがあるかつ幼なじみの俺に度々こうして話を垂れ流しているわけだけど。
「ねえ拓朗、伊沢さんが好きなお菓子って何？」
伏せられていた丸い瞳が俺を捉えた。
恋のキューピッド。
第三者から見ても、彼女から見てもきっと俺はそういう立ち位置だ。俺もそうだと思う。
「…さあ、知らん。今日聞いとこか」
「ほんとに？ありがとう！」
Aの目が一瞬にして輝いた。どんだけ好きやねんとツッコみたい気持ちを抑え、ひとつ頷きを返す。
「…あ、そろそろ講義だ。じゃあお願いね、拓朗！」
Aがちらと携帯を見、慌てたようにバイバイと手を振って俺の横を駆け抜ける。台風の様なヤツだ。
ルールを無視して廊下を駆け抜けるAは小学生の頃から何も変わっていないままで、どこか親の気持ちというか何というか。
「……はー…」
あれだけ伊沢さん伊沢さんと口にしておいて本人には話しかけることすら躊躇っているA。
俺の負担を考慮してもさっさとどうにかなってほしい。そんな願望を抱きながら、俺はオフィスにいるであろう編集長を思い浮かべた。
…ああ、思い浮かべるだけで頭が痛い。
我らが編集長、伊沢拓司も、こと恋愛に関しては相当面倒な人だった。
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山田 - 本当にお話を考えるのもそれを文章にするのもお上手でただただ尊敬です… (2022年10月12日 0時) (
レス) @page24 id: 5e51f51780 (このIDを非表示/違反報告)
あー - 河村さんの話がめっちゃ良かったです! (2020年8月21日 18時) (レス) id: e630ce1c5f (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 290円様。あなたの三角関係系の小説すごく好きです。もちろん他の作品も好きですが、これらは小説としての魅力がずば抜けてます。あとたまに読み手に一抹の恐怖を与える作品も最高です。起承転結がしっかりしていて大好きです。まとまりのない長文を失礼致しました。 (2020年1月29日 3時) (レス) id: e047a9674f (このIDを非表示/違反報告)
むー - 好きすぎて更新されるたび心の中でガッツポーズしております。これからも楽しみにしてます…！ (2020年1月22日 21時) (レス) id: 1dbbe6e605 (このIDを非表示/違反報告)
めろぱん - コメント見て頂けたようで嬉しいです！後日談楽しみにしてます…ありがとうございます…あと他の方もコメントされてますがキューピッドの続編のキャロルもめっちゃすきです…悲恋系のお話大好物なので最高です…心を鷲掴みにされました。こちらのifも楽しみにしてます！ (2020年1月15日 0時) (レス) id: 18726b033e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：290円
| 作成日時：2019年9月25日 17時
