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When we were young ご ページ9

〜Old days〜
3年生の、夏休みが終わる頃、降谷くんが変わった。変わらなかった降谷くんが、変わってしまった。優秀で、優しくて、かっこよくて、でもその笑顔が固まった。
不思議なことに、それに気づいたのは私だけだった。クラスの人たちは全然気にしていなかった。気のせいではないと思う。確かに彼は無理して笑っていたのだ。

「降谷くん、何かあったの?」
気付かないふりをするとか、遠回しに聞くとかができない私は、直球に聞いた。何かあったなら言って欲しかったから。彼は驚いて目を見開いたが、すぐに表情を変え、笑顔を貼り付けた。その笑顔もやっぱり固まっている。
「どうして?何も変わらないよ?」
「嘘だ。」
「何も無い。」
「じゃあ何で。何でそんなに固まった笑顔を作るの?」
「...。」
「私は気づくよ?」
だって、だって。だって私は、降谷くんのことが好きだから。
そんな言葉は、私の口からは出てこなかった。出せなかった。
「...僕、ちゃんと笑えてなかった?」
少しして、降谷くんが言った。固まった笑顔をはぎ取り、今度は泣きそうに笑っていた。
私はなんと答えればいいか分からなくなって、迷って、迷って、降谷くんに伝えた。
「笑うことって、ちゃんとすることじゃないよ。」
降谷くんはハッとしたように目線を上げて、こちらをじっと見た。私は、何か変なことを言ってしまったかと思ってフッと目線を逸らした。そのまま、誤魔化すように続ける。
「楽しい時や、嬉しい時、幸せな時に自然と浮かぶものが笑顔だ、と、思う...よ?」
何だかとても恥ずかしい。降谷くんの視線を感じる。顔がとても熱い。
ふと、空気が緩んだのを感じた。降谷くんが穏やかに笑っていた。それは固まっていない、降谷くん本来の笑顔。私の大好きな彼の笑顔だった。
「深瀬さんは、僕のことよく見ててくれてるんだね。」
言葉が出せなくて、こくこくと何度も頷いた。
「深瀬さんに聞いてほしいんだ。」
「な、何でも聞くよ?聞きたいよ。」
「あのね。エレーナ先生に会えなくなった。」
「...え?」
エレーナ先生。例の、あの女性。降谷くんの、大事な人。会えなくなった...?
「バイバイって言われた。もう2度と会えないんだって。」
「...。」
「僕、あの人のことが好きだった。」
「...うん。」
「もう一度会いたい。」
「...うん。」
「でも、もう無理なんだって。遠くへ行っちゃったんだって。」
降谷くんの顔がくしゃっと歪んだ。それは、私が初めて見る彼の表情だった。

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匿名 - 間違えました(汗)って、は読まないようにしている下さいm(_ _)m (2018年5月5日 0時) (レス) id: 9728013e8e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 改行した方がよろしいってかと (2018年5月5日 0時) (レス) id: 9728013e8e (このIDを非表示/違反報告)
かめ(プロフ) - 矮楼さん» ご指摘ありがとうございます!降谷さんの所属は警察庁ですが、私的な設定として降谷さんは夢主に警視庁勤務であるという嘘をついている、としています。表現の拙さで誤解させてしまってすみません。 (2018年1月11日 18時) (レス) id: b889aa92a9 (このIDを非表示/違反報告)
矮楼(プロフ) - あの、降谷さんの職場って警察庁じゃないでしょうか?ページ28のところです (2018年1月7日 9時) (レス) id: 0e1226e354 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かめ。 | 作成日時:2017年12月18日 13時

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