【HQ】バレーと本と天才【及川徹】

18. ページ20

.




それから5月になり、IH予選を迎える手前だった。

部活終わりに、蒼葉さんの情報が担当編集者による國立 蒼葉のTwitterで「空想生活」が三島由紀夫賞にノミネートされたと言うことが書かれていた。

「ねぇ、岩ちゃん!!」
「なんだ、及川。」
「蒼葉さん、もしかしたら、賞もらうかも。ゆくゆくは直木賞作家になったりして…。」
「お前、國立 蒼葉のことになると正直ウザい。」
「えー。」
「及川さんって國立 蒼葉読むんですか？」
突然、国見ちゃんが話しかけてきた。
「うん。全巻あるよ。」
「意外です。」
「国見ちゃんも読むの？」
「はい。俺も全部ありますよ。」
「国見って意外と読書家なんだな。」
「イトコが凄く本が好きなので、昔からよく一緒に読んでますよ。」
「へー。イトコとか…。いいな…話が出来て。俺と話できそうな人なんか、蒼葉さん大が付くほど嫌いだからさ、話せないんだよね。」
「…そうなんですか。大変ですね。」
「けど、国見ちゃんが話せるのであれば及川さん嬉しんだけどな…。」
「イトコとだけで十分です。ちなみに國立 蒼葉ですが、ゆくゆくは直木賞作家になると俺も思ってます。」
「国見ちゃんもそう思う？」
「このまま順調にいけばの話ですけどね。」
「国見、帰れるか？」
「うん。大丈夫。金田一。じゃあ、俺たちはお先に失礼します。」
「お疲れ。」
「お疲れ様です。」
「お疲れさまでした」
「また、明日ね。金田一、国見ちゃん。」

金田一と国見ちゃんが帰り、部室には俺と岩ちゃんだけになった。

「國立 蒼葉ばかりに気をとられるなよ。娯楽も少しは…」
「最近読む回数減らしているから。」

毎日のように読んでいた本も今では少し控えめにしている。
少しでも長くボールに触れたり走ったりしている。

「あ。だけど、お前、オーバーワークだけはやめろよ。」
「大丈夫。その時は蒼葉さんの本が俺を止めてくれるからさっ！」
「あーそうだな。俺は帰るぞ。」
鞄を持ち、部室から出ていこうとする岩ちゃん。
「ちょっと岩ちゃん！おいていかないでよ!!」



.

19.→←17.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す