[呪術廻戦]巡り会ってまた傍に[両面宿儺] (ページ1)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,072 hit

1話ページ1

両面宿儺の傍には女がいる。

その女は決して都をさわがすような美女ではなかった。何処にでもいるような平民だった。
ただ宿儺が大層気に入っている女だという事は確かで、人目を憚らずに女と街に出ては女に貢いでいるらしい。

そして日々人間を襲い食い殺すような宿儺が女が気に入った市場にいる人間だけは食い殺さず。逆に庇護下に置き、時には呪霊から護っている…そんな噂まで流れていた。

「で、それがこの女だって？」

「宿儺と行動を共にしていたし、宿儺が居ない一瞬の内に攫ってきたから間違いない」

宿儺の傍を歩いていた女を捕らえた呪術師が仲間にそう言う。捕らえた女はブルブルと肩を震わせて身を縮めていた。

宿儺にとっての地雷。それが確かならこの女は宿儺にとっての弱みに他ならない。

本物かどうかは正直攫った術師本人にも分からないが…偽物だとしても宿儺に自ら近付き、宿儺の呪いに取り込まれた哀れな人間として処分するまでのこと。術師からすればどちらにしても殺していい側の人間だった。

「すく…すくなぁ、…こわい、よぅ…」

「にしてもうるせぇなぁ。女の泣き声って嫌いなんだよ、なッ！」

呪術師が足を上げて女に向かって足を振り下げる。ヒッと短い悲鳴と共に女が更に身を縮めて与えられる衝撃に備えようと身体を固くした。

瞬間、バチリと閃光が散った。

瞬く閃光と物理的反射に呪術師が後方に飛ばされ、女がそれを見て「すくな」と声を上げる。

「全く…害虫の掃除が出来ると思えば…ちっぽけな蛆しか居らぬではないか」

「りょ、両面宿儺…！」

女の身を護った式神と共に音もなく噂の主である宿儺が姿を現す。

どうやら姿を消す術を使って女を餌に呪術師を集めて一網打尽にしようとしていたらしく、泣いて自分の名前を呼ぶ女を見ては“馬鹿者め”と呆れた声を掛けつつも気遣うように女を自らの腕に誘い抱き上げた。

「俺がお前から離れるわけがなかろう。一々泣くでないわ」

「でも寂しかった…だからぎゅうして…」

女からの要求を素直に聞き入れて片腕2本で抱き締める宿儺を見て術師が唖然とする。

噂は本当だったのだ、と。

そして宿儺が集まった術師に目を向けるとお前達の役目は終わったからもういいぞと言うように手を上げ

「1人だけ生かしてやる。だから呪術師に伝えておけ。“俺の物に手を出すな”と」

一瞬にして血と肉塊で出来た鮮血の池を作ったのだった。