紅涙の絞り方 SZ 短編 (ページ10)

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「風磨くん、私行くね」

「ん……もう行くの？」

「うん。ここいつもと乗る電車違うから急がないと」

風磨くんは眠そうな目を無理に開けて、体を起こす。

「……車で送ろうか？」

誰がそんな運転に身を任せるか、と内心で突っ込みながら、大丈夫っとハグをしてから頬にキスをする。

「んー、……足りない」

「ねーぇもう。どこにそんな元気が余ってんの」

「Aさんとならどこまでだっていけるよ」

「いま朝だかっうわっ」

下ネタとも受け取れる彼の発言をスルーしようとしたときに回転していく視界。

「ねぇ、そんなに重要な仕事してんの？」

「ひゃっ、」

上に被さってきた彼は鎖骨に顔を埋めてわざと息をかけるように問う。

いつ外されたんだかもう洋服の役目を終えたワイシャツは、しわくちゃになっていた。

彼のネックレスがひんやりと火照ったからだを冷やして、それもすぐに自分の熱でぬるくなって

好きだよって言われる度に、

私もと返すのが遅くなる。

結局、事務所についたのは午後を回ったところだった。

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