紅涙の絞り方 SZ 短編 (ページ3)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:1,498 hit

3 ページ3

.

「Aは彼氏作んないの？」

「……え」

勝利のせいでしょ

なんて言えるわけない。

「いや、作んないんじゃなくて居ないんだよ、貰ってくれる人」

半分ホントで半分ウソ。

作んないんじゃない、作れない。告られた事はあるけど、そんな人はもう別の子に告ってリア充だし。

「あぁ、A付き合ったこと無さそうだもんねー」

「な、何を生意気なっ勝利はこの前……っあ、ごめん、何でもない」

言い返そうとして、言葉を失う。

やってしまった。

焦って何も考えられなくなる。喉だけが乾く。

手元のカップを掴んで一口、それよりちょっと多めに口に含んだ。

「ゲホッ、にっがっ！」

「ばかそれ俺の！」

「うわごめ…え、勝利コーヒーなんて飲むようになったのっ？！」

「ショートケーキと一緒だったからいけるかなって思って」

ストローから一気に口に広がったコーヒーに慌ててカフェモカを補給する。

あたしのアホすぎる行動に、勝利はまた憎たらしくケタケタと笑っているのかなと勝利の顔を盗み見ると、

私の考えとは裏腹に彼は真面目な顔をしていた。
じっとあたしを見ていた。勝利を盗み見たあたしと目が合うくらいに。

「ねえ、なんでAは俺に彼女作らせようとするの？」

不意に勝利はそんな質問をした。

私は、すぐに答えられなかった。

『勝利に幸せになってほしいから』

ううん、きっとそんな綺麗な事じゃない。

もっと最低で酷い醜いことだから。

『彼女との関係に、私も関わっていたいから』

きっとこれが本心。

「勝利に紹介した女の子、皆あたしのとこに来て勝利に好きだって伝えてって言ってきた子なの。
皆ね、本当に勝利が好きな子ばっかでさ……」

「じゃあさ、

頼まれたら、俺の気持ちなんてどうでもいいの？」

あたしの言い訳にもならないような言葉を制して、勝利は少し不満そうな顔で言った。