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『一度設定した目標を、何があっても変えないのはすごいです』
「……それは嫌味か？」
『まさか。一途なのいいなと思って。私、案外浮気性なので』
最後に一撫でして頬から手を離す。ほんのり微笑めば、そんな私とは真逆に視線を反らすコージーさん。長い睫毛が陶器のような肌に影を落としており、哀愁漂う雰囲気はまるで映画のワンシーンのようだ。どんな格好でも様になるんだからやっぱり顔が良いとは罪なものだ。
「……お前、隈ひでぇよ。もっと寝ろ」
『そうですか？』
「ほら、来いよ」
ポンと隣の空いたスペースを手で叩かれる。確かに人ひとり横になれそうな空間はある。ただ、私は二度寝をする気は無い。だって今から下山準備をするのだから。しかし彼の好意も無駄にしたくない。
どうしたらよいか迷っていれば、無理矢理手を引かれ彼の隣に強制的に移動させられた。あれよこれよと寝る準備を整えられ、次に口を開けたのは横になった時だった。
『あの、コージーさん？』
「おやすみ、A」
寝袋の上から二人でブランケットを共有する。意外と近い位置に西洋人形のような美しい顔があり、こちらを凝視しているのだから寝れたものではないし、起き上がることも許されない。
『……そんなに見られてると寝づらいのですが』
「嘘だ。お前、俺が目離したらどっか行く気だろ」
読まれた心に短く笑う。
やはり一週間ちょっと一緒にいれば思考も少しは理解できるようになるのは、さすがに私だけでは無かった。
否定も何も出来ないので、苦し紛れに挑発的に下唇を舐めてから瞼を降ろした。
* * *
『嘘でしょ』
「残念ですね、狂気山脈はAさんを降ろしたく無いようですよ」
『はは、それはそれは。全くのお門違いだ』
「……本当に降りる気なんですね」
ごうごうと鳴り響く風の音。ガタガタと揺れるテントの骨組み。なんと、強風である。
デスゾーンにいながら強風や猛吹雪に見舞われるのが経験上、一番辛い。その場にいるだけでただでさえ体力を消費するのに、かといって行動するのも賭けだ。安定択を取って停滞によって何も出来ない一日を過ごすのももどかしい。
簡単に言えば命の危険を轟かすリスクを上げてどうするんだ、という話である。
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夜隠(プロフ) - 銀さん» たくさんの感想ありがとうございます！ここまで来たからには私も良い景色を見せてあげたいものです…完結まで間近ですが、最後まで気を抜かずに書いていきます。もう少々お付き合い頂けると嬉しいです！ (2020年7月13日 5時) (
レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
銀 - 何の景色を見ることになるのが楽しみです。長々とすみませんでした…だけど言いたかった…!完結まで後少し。ずっと応援し続けます!! (2020年6月28日 21時) (レス) id: 321732a1a4 (このIDを非表示/違反報告)
銀 - 夜隠さん» 今回のリーダーと夢主さんの話辛すぎて号泣しました…第一次登山隊との別れのところ(Polarにて)や3人を見つけたとき(Night後半および今回はじめ)でも号泣しましたが、最後に見つかっただけあって、ここまでの思いが溢れてきましたね…最後、第二次登山隊と夢主さんが (2020年6月28日 21時) (レス) id: 321732a1a4 (このIDを非表示/違反報告)
夜隠(プロフ) - 木ノ葉さん» 応援ありがとうございます！やっと完結が見えてきました……もう少しおつきあいいただけると嬉しいです！ (2020年6月28日 5時) (レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
夜隠(プロフ) - Contrastさん» 第一次登山隊の話は山場でもあるので凝ったかいがありました……！褒めてくださって嬉しいです、ありがとうございます！ (2020年6月28日 5時) (レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜隠 | 作成日時：2020年6月21日 7時
