予兆夢 ページ7
久々に夢を見た。元々眠りの深い私にとっては珍しいことであり、同時に不安にもなる。
その夢とは漆黒の山脈を、無数の人影が列をなして登っている夢だった。
一歩一歩着実に前進する隊列を嘲笑うかのように山が鳴動する。おかしい、ありえない話なのだが、ズルリ、と山が身じろぎしたようにしか思えない。その震動に耐え兼ねひとり、またひとりと、まるで山に飲み込まれるように登山者たちは消えていく。
漆黒の山脈に無数に空いた「うろ」から、飲み込まれた人たちが無残な「残骸」と成り果てて、吐き出されていく。漆黒の谷が、あっという間に、虹色に染まっていった。
まさに、虹の谷。そう呼ぶにふさわしい。
次々と落下していき、その度に黒い谷に新たな色が加わる。目を反らそうとしてもそらせない。気味の悪い表現だが、眼球を何者かに固定されているような感覚だ。それこそ、まばたきすら許されない。
赤、緑、青、黄、黒、紫……絵の具のパレットのように鮮やかに変わり果てた谷をやるせない気持ちで見つめるしかなかった。
お願い、もう許して。
人が目の前で死んでいく様子など見たくもない。それを何も思わず見送れるほど気が狂ってるわけでも野心家でもないのだから。
ふと、虹の谷の一部となりはてた登山者たちの中に、私は見つけてしまった。何にも染まらぬ白いウェアを。私以外に白を好んで着ている人間はみたことが無い。その情報は惨劇から意識を反らすには十分であり、仰向けに倒れるその人の顔を凝視した。
やけにクリアな視界で、その人の……いや、その女の顔を理解したとき、どうしようもなく息が詰まる。
それは、「私自身」の姿だったのだ。
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夜隠(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます！この小説を見つけてくださった事がとても嬉しいです。応援ありがとうございます、更新の励みになります！ (2020年6月21日 7時) (
レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 好きです！（突然の告白）何故今まで読んでいなかったのか…と後悔しましたwまぁとにかく好きです！更新頑張ってください！ (2020年6月18日 21時) (レス) id: 1840efb8a6 (このIDを非表示/違反報告)
夜隠(プロフ) - コンソメさん» お返事遅れて申し訳ないです。私も下山諦めましたね…褒めて下さりありがとうございます！ご期待に添えるよう精進して参ります。 (2020年6月11日 4時) (レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
コンソメ(プロフ) - あっ、やばい。下山は諦めたけどもう、うん(語彙力消失)僕が書いてるのとは比べ物にならない素晴らしさですね。こんな良い話を書いてくれてありがとうございます。応援してます！ (2020年6月7日 11時) (レス) id: 1d8435ec80 (このIDを非表示/違反報告)
夜隠(プロフ) - 銀さん» お待たせしました……！ここまで来れたのも読んで下さる方々のおかげです。ありがとうございます。銀さんも体調にお気をつけ下さい。 (2020年5月30日 4時) (レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜隠 | 作成日時：2020年5月24日 5時
