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覚悟は出来てます。
寒さか、はたまた緊張からか。青紫色に染まった唇をきゅっと一文字に結ぶ彼の姿に頭を強く殴られたような感覚を覚えた。
私と彼は目的は一緒だが、心構えは真逆だ。
彼は全てを受け入れる覚悟が出来ている。しかし私はそれが出来ていない。都合の良いように事実から目を背けてしまうかもしれないし、事実から逃げ出してしまうかもしれない。同じく人探しのためにここまで来たというのに、突きつけられた意識の差、自身の心の弱さを痛感してしまい、無意識に半歩後ろへ下がる。
そんな私などものともせず、前を見据える晴さんの目は非常に冷静で、憎いほどしっかりした足取りで歩き出す。
洞窟の暗闇に消えていく後ろ姿に重い足を持ち上げた。
* * *
重く、冷たい空気が支配する。何も話さないというよりは何も話せないのだ。やがて洞窟の先に出口らしきものを見つけた。開けたその先は払々さんが言っていた通り、行き止まりで谷になっていた。
誰からともなく谷底へ向けたヘッドライトがその惨状を照らし出す……と思ったのだが、私の位置からはそれがちょうど突き出た岩の影で見えない。
場所を代わってもらおうと三人の方を向くが、皆さんはその谷底へ夢中で私の視線には気づいていないようだった。
無理に割り込む手もあるのだが、この崖の足場は少なく、非常に不安定だ。大人四人が横に並んでしまえば入れ替わりは困難であるほど。
「うっ、わ」
「……どうして、あんな死に方を」
「！？ Aさん、何を……！」
『少し、見てきます。心配しないでください、登攀には自信あるんで』
食い入るように見つめて動かない彼らに、心に黒いシミが広がった結果だった。
常備しているロープを手近にあった、大きく丈夫そうな岩に結びつける。固定されたことを確認すれば、もう一方を自身の腰にくくりつけた。
ガチャガチャと音を鳴らす私に、ようやく我に返ったらしい晴さんの制止の言葉がかかる。しかし今の私にとっては彼の声などに全く心に響かない。
ひとこと言い残し、暗い谷へ身を放った。その瞬間「Aちゃん！」と金切り声の悲鳴が静寂だった谷に響く。ヘッドライトを直接当てられて眩しい。目元を片手で覆い、もう片方の手で着地のバランスを取った。
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夜隠(プロフ) - 匿名さん» コメントありがとうございます！この小説を見つけてくださった事がとても嬉しいです。応援ありがとうございます、更新の励みになります！ (2020年6月21日 7時) (
レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 好きです！（突然の告白）何故今まで読んでいなかったのか…と後悔しましたwまぁとにかく好きです！更新頑張ってください！ (2020年6月18日 21時) (レス) id: 1840efb8a6 (このIDを非表示/違反報告)
夜隠(プロフ) - コンソメさん» お返事遅れて申し訳ないです。私も下山諦めましたね…褒めて下さりありがとうございます！ご期待に添えるよう精進して参ります。 (2020年6月11日 4時) (レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
コンソメ(プロフ) - あっ、やばい。下山は諦めたけどもう、うん(語彙力消失)僕が書いてるのとは比べ物にならない素晴らしさですね。こんな良い話を書いてくれてありがとうございます。応援してます！ (2020年6月7日 11時) (レス) id: 1d8435ec80 (このIDを非表示/違反報告)
夜隠(プロフ) - 銀さん» お待たせしました……！ここまで来れたのも読んで下さる方々のおかげです。ありがとうございます。銀さんも体調にお気をつけ下さい。 (2020年5月30日 4時) (レス) id: 2199585496 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夜隠 | 作成日時：2020年5月24日 5時
