# ページ6
朱音はそのすきに背をむけ、まるでおびき寄せるように背を向け森のなかを駆けた。
敵に背を見せるのはあってはならぬことであり、男は貰ったと、照星をのぞき、引き金に指をあて、強く引くと風を切り、飛翔する銃弾は、地へとおちる男の胸の内奥にあたった。
百発百中である腕前である彼。しまった、というのにはもうおそく男の断末魔が森に響き渡る。
それは、全て朱音の計算であった。みょうに頭がよく回る彼女は瞬時にこの作戦が思いついたのだ。
ぼうぜんとしている敵に狙いをさだめ、わざと外すように男の足に銃弾を放つ。それは、狙い通り足に当たり次は片足にむけ放った。両足とも役の立たたないものになってしまい、彼はくずれ落ち、尻が地につく。
足が無ければ何もできない。
彼は静かに目をとじ次にくるであろう強い激痛と衝撃を向かい入れた。しかし激痛と衝撃はやってこず、男はおそるおそる目を開ける。
そこには彼女が立っていた。絶対零度の瞳で、光など微塵も入っていない瞳で己を見下ろしてくる彼女に男の鳥肌が立ちあがる。しかし、こんなことで恐れをなしていたら狙撃手失格である。
「……殺せ」
「……なんで？」
「足がつかえなければ意味がない」
「そう。けどその前に情報を吐いてもらわなくちゃ」
朱音は男性の前にしゃがみこむ。目線をあわせ、まるで子をしかる母親のように、ゆっくりと尋ねた。
「……ボスの居場所は？」
それは彼の内奥を確実に蝕んだ。
彼が口を開き、言葉を紡ぎだそうとした時だった。彼が右斜めに倒れた。
胸からは血が噴射し、朱音の頬に赤い血が線を引いた。
急いで立ち上がり周りを見渡すものの、どこにも気配は感じない。もう、立ち去ったってしまったのだ。
彼の喉奥が悲鳴をあげ酸素を必死に肺に取り込もうとするのだが、銃弾の衝撃により肋骨は綺麗に二つに分かれ、息をするたびお腹が圧迫され腹に尖った骨が刺さる激痛が走る。激痛に顔は歪み視界が白く染まり、ちかちかと何度も視界がしばたいた。
浅い呼吸を何度も繰り替す。それは、世界の何割になるのだろう。
誰がどうみても彼が瀕死であった。
そんな中、色素のない彼の唇が静かに動く。
「……残念。私は凡人よ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
双黒尊い…(プロフ) - 正義の味方になりたかった男さん» コメントありがとうございます！はい！私は、小説をかくなら本格的に書いていきたい派なので！ちょっと読みずらいかもしれませんが(笑) (2020年2月7日 19時) (
レス) id: f17b921f9b (このIDを非表示/違反報告)
正義の味方になりたかった男(プロフ) - うぉーー！縦書き！本格的だね (2020年2月7日 19時) (レス) id: 6670beebf5 (このIDを非表示/違反報告)
双黒尊い…(プロフ) - 湊真さん» ありがとうございます！わたしもこんなCSS見たときは感動を覚えましたよ！更新頑張らせて頂きます！ (2020年2月7日 16時) (レス) id: f17b921f9b (このIDを非表示/違反報告)
湊真(プロフ) - こんなＣＳＳ初めて見ました・・・！！物凄く面白いです！！更新待ってます！！ (2020年2月7日 8時) (レス) id: e706ac4195 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：双黒尊い… | 作成日時：2020年2月6日 18時
