ただ笑う顔を見させて (ページ1)

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Crasy! ページ1

「おはよう！彩花」

「僕は彩花を甘やかすために来たんだ」

「さぁ！飛び込んでおいで！」

いやいやいや、
あなた誰ですか。
っていうかなんで私の名前知ってるんだし。

源との出会いはあまりに唐突で
衝撃すぎるものだったっけ。
やったらにこにこした明るい”男の人”は
いきなり目の前に現れてそう言った。

「...どうやって家に入ったんですか。ていうかあなた誰ですか。盗めるようなものここにはないですから、お引き取りください。」

「つれないなー、忘れちゃったの？僕だよ、源だよ。」

「...人違いじゃない？」

あ、もしかしてこれ、夢？

「ほっぺたつねったって痛いだけだって。」

「...」

「まー、いいや！ほらご飯にしよう。彩花の大好きなオムレツ作ったんだから。」

...オムレツに反応したのだろうか。
ちょうど鳴った私のお腹。
気がつけば、

「...食べる。」

と答えてしまっていた。

ふふ、っと笑みをこぼしてキッチンへ向かって歩いていく彼の後ろ姿。
ついていかない思考を纏める前に食い気が勝ってしまったのは女としてどうなんだ。

まぁいいか。悪い人じゃなさそうだし。

見知らぬ男を受け入れてしまうほど、
わたしは疲れ果てていたのかもしれない。

「ほら、どーぞ！」

「え⁈なにこれ。全部源さんが作ったんですか？」

「そ。冷めないうちに食べちゃって。」

「いただきます。」

どっかの高級ホテルの朝食にありそう。
シェフかなんかですかあなたは。
見た目通りの美味しさだけではなくて、お袋の味と言うべきか、慣れ親しんだ懐かしさが思わず頬を緩ませる。

「随分美味しそうに食べてくれるね。」

「幸せー！こんなの毎日食べられたらなんでも頑張れそうー！」

「じゃあ、よかったね。これから毎日食べられるから。僕も作りがいがあるし。」

「え。」

「彩花、彼氏いたっけ？」

「...最近振られましたけど。」

「じゃあ問題ない。これから3ヶ月よろしく」

「いや、あの、え、...は？」

「ほーらー、急がないと。遅刻遅刻！」

「...嘘⁈ごちそうさま！もう行くので申し訳ないですが片付けお願いします！」

「はいはーい、いってらっしゃい。夕飯前に連絡してね。」

急いで髪を結わき、パンプスに足を引っ掛けて家を飛び出した。

「...変わってない。聞いてたよりは元気だったかな。」

そう呟いた声は彼女に届く間もなく消えていった。