8 ページ9
.
彼が服を脱ぐとおびただしい程の傷が露になった。
その傷が痛々しくつい目を瞑ってしまう。
「…綺麗なもんちゃうやろ…、17年間あいつらが俺にくれたのはこれやった。あんたも、そうやろ？」
彼は憐れむように私を見つめた。
「ええんや。もう慣れてもうたから」
『違う…貴方がいくら慣れたと言ってもそれは私が貴方を心配しない理由にはならない、お願いだから自分を大切にして欲しいんです、』
今まで恐怖しか写してこなかったその瞳はきっと私を信じる事はまだ出来ないけど
『貴方達は皆んな人間で悲しさも苦しさも人並み感じてます。』
「…！でもｯ、俺は…」
『私は貴方を買った、この出会った理由はほんとしょうもないしもう2度と言いたくない。でも私は貴方の家族になりたい。もうこれ以上貴方を傷つけるのは私が許さない』
その時彼の濁り切った瞳に光が宿った気がした。
その大きな瞳からは大粒の涙がまるで聖水のように溢れ出ている。
『泣きたきゃ泣けばいい。笑いたければ笑えばいい。
貴方の感情は他人が支配するものじゃない。
素直に生きて、絶対後悔させないから』
出会ったばかりは心を失った野獣のようだった。
でもやっぱり彼は綺麗なのだ、それが今の涙の証明になる
彼はしばらく泣いた後にへりと笑いこちらを見た
「俺、こいつら以外に優しくされたん初めてやからなんか嬉しいわ…」
どうにも引っかかってしまう言葉だが素直に飲み込もう。
少しでも安心してくれればいい
私は笑って彼の頭を撫でた
すると犬のようにパッと明るい顔してまるでしっぽが揺れているように見えた
『なんだ、ちゃんと笑えるじゃん』
すると彼はまた泣き出した。
今日は沢山泣いていいの、ううんと吐き出してしまえばいい
様子を伺ってもまだ泣き止める状態ではないと判断したので後ろに周り彼の傷を治すことにした。
たまに吃逆をして体を揺らすものだから優しく背中を叩くとまた安堵したように泣き始めた。
今まで泣かなかったのかな、
・
私が神妙な顔しながら手当てをしていると肩をトントンと叩かれた。
後ろを振り向けば「神」という雑面をつけた男。
少し切れてしまった雑面から見える瞳からは少し疑っているのか控えめな感じがする。
『どうされました？』
「あ、いやえっと、、」
「えー…俺も医学興味あるし少しの理解はあるから良ければお手伝いできます」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1538人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りす(プロフ) - 好きです〜！wrwrdのみんなと夢主ちゃんには幸せになってほしいです！頑張ってください〜！応援しています！ (9月13日 8時) (
レス) @page31 id: 6cf6d64f42 (このIDを非表示/違反報告)
まる麺 - 面白いです！これからも無理のないように更新頑張ってください！ (8月31日 23時) (レス) @page30 id: 81fa0833c9 (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬか - 好みだぁ…………………！ (7月29日 15時) (レス) id: 6a6324a65b (このIDを非表示/違反報告)
烏丸 - 一気読みしました！面白いしそれぞれの過去がもう…(泣)応援してます！！ (5月22日 22時) (レス) @page27 id: 144a6ab78e (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 更新ありがとうございますーー！！！ (5月20日 11時) (レス) @page27 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なつき | 作者ホームページ：作品の温度差で読者様に風邪を惹かせる
作成日時：2022年11月23日 16時
