・戦い方と救われ方−2 ページ15
声がして、ばっと跳びのきながら振り返る。
「…!!?」
環火は言葉を失った。刀をどう構えて良いのか分からなくなり、取り敢えず全容を把握しようと視線を巡らせた。
「(…15尺はある)」
背丈は約4.5メートル程、跳んでも首までは近づけない大きさだった。
「チッ…」
環火は手頃な木に足を掛けて最速で登った。不安定で力を込めるといつ折れるかも分からない。ただこの数刻は保ってほしいと願うばかりだ。
「(伍ノ型、炎虎!!)」
しかし、木で登れたのもせいぜい鬼の胸あたりだった。広範囲の技で腹をかっ裂く。まるではんぺんでも切っているような、柔い感触だった。そのまま地面に着地し、鬼の様子を見た。
「は、はは…これは効く」
目を大きく開いているが、塵になる気配はまるでない。まぁ頸は落としていないので当たり前といったら当たり前かもしれない。しかし上半身が落ちてくるから、それに合わせて次の攻撃をした。
「(弐ノ型、昇り炎天…!!)」
頸を裏から大きく斬り上げた。ここもまた、はんぺんのような軽さで、違和感がした。
「…なんだ…?」
何がなんだかわからなかったが、鬼の斬った頸はそのまま転がっていた。生きているのかと思ったが、もう顔は変化しない。血の巡りは絶えたようだ。
すると、すぐに胴体からまた全身が作り出された。もくもくと膨らむように、瞬く間に、復活した。
「(壱ノ型、不知火…!!)」
また頸を一撃で落とす。やはり軽かった。刎ねた頸はぽすんと綿袋のような音がして着地した。
「ははっ、脳がないのぅ。頸を落とす一つ覚えか」
その巨躯は変わらず、だがまた新しい頭を取り戻していた。鬼は笑みを深めて腕を振るった。
「っ!!」
環火は刀で拳を受け止めて、後ろに跳んだ。斬ったら軽いくせに、力は恐ろしいほどあった。ザザッと落ち葉で足が滑りそうになるのを耐え、次の攻撃を考える。
(頸が弱点でない…)
どうするべきかと悩む。こういうとき、兄ならばどんな型を選ぶだろうか。自分が兄よりも上手くいかないのは考えないからだ。
鬼は追手をやめない。刀で受けたり斬ったり、距離を詰めたり離したりしながら頭を回した。その時、いつかの父の言葉が脳裏に蘇る。
頸は絶対にある。どんな鬼にでも。焦らずに探すんだ。
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作者名:白夜ひすい | 作成日時:2020年11月22日 12時