ナイトボーイ. (ページ9)

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樹「ふふ‥これでこの家の住人全員に会ったね。」

しばらくして、樹さんがそう呟いた。

そういえば、ハンカチのお礼にと思わず着いてきたけれど、樹さんの意図は未だに分かっていない。

そんな俺の思考を読んだかのように、彼は口を開いた。

樹「こーちくん、お願いがあるんだ。」

「‥はい、なんですか？」

すると、樹さんは俺に一枚のカードを手渡した。

そして‥‥

樹「この俺たちの隠れ家に、

毎日じゃなくていいから来て欲しいんだ。」

「‥え？」

何度も理解しようとその言葉を脳内で繰り返しても、全く分からずに首を傾けてしまう。

ただ、咄嗟に出てきた答えは‥

「無理、です‥‥」

樹「ええ！！？」

俺はそもそも今のこの状況すら飲み込めていないし、

夜の街の人たちとはあまり関わりたく無い。

だって何か大変事に巻き込まれそうだし、夜の街は何より居心地が悪い。

俺は先程の北斗さんとの会話を思い出し、ますます否定の言葉がわんさかと浮かんできた。

しかし、樹さんは‥‥

樹「ねぇ、お願い。

俺こーちくんに惹かれちゃったの。こーちくんがこの家に来るだけで良い。こーちくんが夜の奴らを良く思ってないのは顔を見て分かったけど‥

安心して、絶対こーちくんに危害は加えさせない。」

根拠もないそんな言葉。

だけど不思議と安心して心を開いてしまいそうになるのは、彼が口説き上手だからなのか‥

「で、でも、何もしないのに家に来るだけだなんて‥」

樹「‥じゃあ、料理して欲しい。俺ら夜は外だけど昼は家にこもってるんだ。だから昼は家でご飯食べてるんだけど、栄養ないもんばっかなんだ。

‥‥頼める？、」

ああ、ずるい。

その仕草や表情で多くの女性を口説いてきたのだろう。

俺はしばらくして、小さく頷いた。

‥深夜なのもあって、頭がろくな判断ができてないのかもしれない、が。

彼のその表情に、あっという間にありえない選択をしてしまった。