7話 ページ9
あの人…消えた？
もぞもぞと布団から顔を出す私に椅子に座っていた野坂くんと目が合った。
野坂「昼ごはん食べないの？」
「…。」
まだ警戒心がとれないのか返事はすんともうんとも言わなかった。
野坂「そんなに警戒することじゃないんだけど。あえて君に言いたいことがあってここに来たんだ。」
ハンカチで口を拭き取り座っていた椅子から立ち上がってベッドの傍へ来た。
それがやはり警戒心を煽るのか少しだけ身を引く。
野坂「(昨日みたいに一気に下がらないってことは少しぐらいは心を開いているってことかな？それとも単なる逃げ道がないって意味かな？)」
それでも少しは心を開いているようで野原はちらちらっと野坂を警戒しながら毛布の中の影から顔を少し出した。
野坂「ふふ、君は毛虫みたいに隠れるね」
ふわりと笑う野坂に野原は驚いた顔でまた顔を布団の中へ隠した。
野坂「あぁ、また隠れた。照れ屋さんかな？」
そう呟く野坂に彼女、野原はぽそっと呟いた。
「の…野坂…くんは…」
野坂「うん？」
反応した声にびくびくっと野原は反応し何も言わなくなる。
素直さが、率直な言葉に傷つく人もいるから野原は言いたいことに口を閉じた。
野坂「…俺は、君が思っていることがわからない。」
呆れたのかな？という程に脱落した声が耳に響いた。
野坂「どうしてこんなに君と話したいのかも知らないし、何故君みたいなイライラするような女性に声をかけるのかさえもわからない。」
それは会った時からそうだったのかも知らない。
私は涙が溢れるように布団ごとがたがたと震え泣きそうになった。
ぐずる声は聞こえないように口に手を抑えた。
野坂「だけどね、これは多分君に興味を示しているからこうして君と話したいんだと思う。知りたいんだと思うんだ。君は僕に言いたいことがあるよね？それ、言ってくれないかな？言ってくれないと僕には分からないから。」
興味と言う言葉に少し不愉快だけどなぜか野坂悠馬に言われたことに嫌気もなくただ暖かい何かがあった。
「わ、たし…。私、」
野坂「うん」
「分からなくて…。こんなにも貴方を怖がって離れようと、嫌がって遠ざかろうとしているのに…それに対して貴方が何も嫌がらず近づいてくることがわからなくて…」
涙が布団に落ち、びしょびょになっていく。
野坂「言ったよね。興味あるんだって。ほら、布団を除けて。それから僕の顔を見るんだ」
優しい手が布団を掴みふわり剥がされる
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作者名：野薔薇 | 作成日時：2019年3月10日 23時
