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「おーい」
反応はない。
秋神の家だ。団地の奥に建つひっそりとした一軒家に、我が物顔でズカズカと入っていく。黒い壁に四角い作りのモノトーン系統の家はなんとも彼らしい、と訪れる度に思っている。
中に入って迷う事なく二階へ上がり、一番奥の扉をゆっくりと開けた。そこは寝室で、真ん中に少し大きめのシングルベッドが置かれている。
そこで精霊のように眠る彼へ、一言。
「おはよ、……スマイル」
数回瞬きをした後、その冷たく、それでもどこか暖かな瞳が、芽吹くように開かれた。
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「………もう、交代…?」
「そうだよ、早く起きろ」
「んぇ……」
まだ眠たげに目を擦る彼の肩を揺する。
一年も眠っていた季節が目覚めるための「覚醒」は体力と時間が必要で、彼の横に座って待ってやった。
春夏秋冬のはっきりした区切りはないため、一日や二日、夏と秋が共存しても何の問題もない。
再び布団に潜ろうとするスマイルをなんとか引っ張り出して座らせた。全く寝起きが悪いものだから、しょうがない。
「ほら、飯食おーぜ」
「…ん」
そう言って、彼を連れて一階へ降りた。
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その後はと言うと、スマイルと一緒にピザを食べて、彼の覚醒がほぼ完成したのを確認してから家に帰った。
自室に戻り、机に向かって座る。取り出したのは新しくちぎったメモと、黒のボールペン。
" 拝啓 冬を生きる君へ "
そんな、突拍子もない書き出し。
" 拝啓 冬を生きる君へ
メモ受け取った。
俺の我儘にも付き合ってくれるって、信じてこれ挟んどくわ。
これから一年、自分の季節で楽しかったこと報告しようぜ?
俺めっちゃ冬のこと知りたいんだよね。
じゃ、また一年後。
きんとき "
そう綴ったメモを四季書へ挟むと、家の灯りを全て消してベッドへ潜り込んだ。
___夏が、終わる。
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秋乃みなと(プロフ) - 自由さん» コメントありがとうございます。受験は無事合格しましたので、お話を思い出しつつ書いていきたいと思っています。まだ読んで頂けているのならば嬉しいです。ありがとうございます! (2023年4月7日 1時) (レス) id: 323d0a35b0 (このIDを非表示/違反報告)
秋乃みなと(プロフ) - さくちゃんちゃんさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなりすみません。長らく更新をしていなかったのもあり、書き方を忘れてしまいましたが、ストーリーなど思い出せる範囲で少しづつ更新していこうと思います! (2023年4月7日 1時) (レス) id: 323d0a35b0 (このIDを非表示/違反報告)
自由 - はじめまして。初コメ失礼します!ほんとに子の物語り、私に刺さって感動です🤦♀️主様の受験勉強、今どうなっているのか分からないですが、もしお暇であれば続きを書いていただけると凄く嬉しいです🫶待ってます (2023年3月17日 1時) (レス) @page14 id: ff0084b57f (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃんちゃん - はじめまして!コメント失礼します\(_ _)ストーリーが大好きで3,4回くらい見てるかもしれません...ゆっくりでいいので頑張ってください!続き楽しみにしてます! (2022年11月13日 14時) (レス) @page14 id: d436cdacdb (このIDを非表示/違反報告)
秋乃みなと(プロフ) - いかすみさん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです!これからも不定期ではありますが、ゆっくり更新して行くので気長にお待ち下さい! 勉強頑張ります! (2022年6月7日 21時) (レス) id: 480327bdf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:秋乃みなと | 作成日時:2022年5月8日 10時