◇ ページ22
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「ねぇスマイル？」
「…なに？」
「なんで戻ってきてくれたの？」
刑務所から飛び出してしばらく。
夜の街を飛び回って、結局俺の家にたどり着いた。自分の家の屋根に乗ったのは初めてだった。スマイルは屋根の傾斜が緩い所へ降り立つと、そっと俺を下ろして座らせる。
「なんでって、だって……」
その問いに彼は困ったような顔をする。
相変わらず瞳は赤く輝いたままだったが、今となってはもうどうでもよかった。
「あの時は怖かった。俺、本当にきりやんを殺すんじゃないかって思った。殺したくねぇのに、止められない気がして、ただ怖くて……必死に逃げた。その後合わせる顔がないと思ってた、けど、……」
「……うん、」
「………やっぱり、最後の日くらい、会いたくて」
"最後の日"。
分かっていた。どうしようもないことくらい。
分かってしまったから、どうすることもできない自分が悔しくてたまらない。
「なにか止める方法は…」
「ない。…あと数時間、＿＿朝日が昇ると同時に、俺は消える」
「……やだよ、なんで……もっと話そうって言ったじゃん、いつか星見ようって、約束したじゃん、…」
喉がぎゅっとして苦しい。
縋り付くように解決策を考えるも、彼の表情を見た瞬間にその思考は止まった。
彼は笑っていた。
煙を握ろうとして消えてしまったような、そんな微笑み。そんな顔を見てしまうと、これ以上「行かないで」と言うには酷で、辛くて、口を噤む。
「俺ね、きりやん……きりやんと話せて良かったって思ってるよ。日本一の殺人鬼がきりやんでよかったって」
「…うん」
「消えるのは惜しいけど、……それでもこの千日、ずっと楽しかったよ」
「うん、…」
あぁ、これで本当に最後なのかと唇を噛み締める。
水平線の向こうを眺めた。夜空に浮かぶ満月は、彼のブローチと同じ輝きをしている。
「スマイル」
「ん？」
「最後にひとつ、俺のお願い聞いてよ」
可能性として半分はダメ元。
でももう半分は本気で思ってる。
「最後に、俺の魂を狩ってよ」
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秋乃みなと(プロフ) - ゆんさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！心に残る文を書けていたなら嬉しいです...! 次回作でまたお会いできたら幸いです。本当にありがとうございました！ (2022年5月3日 7時) (
レス) id: 480327bdf9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - 完結おめでとうございます。言葉選びや情景描写が大好きです。思わず泣いてしまいました。素敵な作品をありがとうございました。 (2022年5月2日 21時) (レス) @page24 id: 90a7e1b245 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：秋乃みなと | 作成日時：2022年3月20日 18時
